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Vol.46 「ストレスと老化」の関係

みなさん、こんにちは。理学療法士の秋山真衣美です。だんだん暖かく春らしい季節となりましたね。このシーズン、私は可憐な花々の姿を思い浮かべますが、みなさんはいかがでしょう。

さて春は、多くの方々にとって様々な変化がある時期ではないでしょうか。例えば、就職、転職、転勤、引っ越し、新たな人間関係など。そうした環境が変わることで、ストレスを感じることも多くあると思います。ストレスは「人生のスパイス」とも言われるように、心と体を刺激し、いきいきした生活を送るために適度に感じることは必要なことだとされています。しかし、過度なストレスは心と体のあらゆる部分に影響を及ぼします。

そこで今回は、若さと健康を保つために「ストレスと老化の関係」について、お話したいと思います。

人間は年とともに少しずつ体が変化していきます。それが老化です。老化とは成長期(性成熟期)以降、全ての人間に起こる加齢に伴う生理機能の低下を示します。老化の速さは全ての人が同じではなく、個人個人で異なります。それは遺伝的要因や生活スタイルなどの生活・環境要因が複雑に影響を与えているからです。では、なぜストレスと老化には関係があるのでしょうか。

まず、ストレスについてお話したいと思います。ストレスを受けることで、人間の体や心には変調が起こります。ストレスをどう感じ、ストレスが心身にどれくらい影響するかは、個人によって違います。同じ条件・同じようなストレスを受けたときでも、個人により反応は異なります。その差は性格や体質、生まれ育った環境、これまでの経験、価値観や考え方、ライフスタイルなど、たくさんの要素によって生じます。ストレスに対する反応の程度は外部からの刺激の強さだけではく、それぞれの人がそれをどう受け取るかによっても決まってきます。

適度なストレスは、いきいきとした生活を送るために必要だとされていますが、強い過度のストレスを受けると体にはどのような影響があるのでしょうか。

私たちの体には、ストレスから健康を守る仕組みが備わっています。しかし、過度のストレスはその仕組みを壊してしまうことがあります。私たちの体はストレスを感知すると、「ストレスと戦いなさい」という指令が視床下部から神経系と内分泌系に伝わります。すると神経系の自律神経では交感神経が働き、アドレナリンなどのホルモンが分泌され、呼吸や血圧を一定に保つように身体の各器官に働きかけます。内分泌系では視床下部−下垂体−副腎皮質の活動が亢進し、副腎皮質ホルモンが分泌され、体内のホルモンバランスを保ち、内臓の働きや新陳代謝を活発にさせます。さらに神経系と内分泌系の働きに促されて免疫系も作用し、全身の抵抗力を高め、体内を正常な状態に保とうと、防御体制が準備されます。

しかし、過度のストレスや慢性的なストレスを受け、視床下部がずっと働き続けいている状態になると、神経系と内分泌系に正確な指令を伝えられなくなり、体内を正常な状態に保つシステムが維持できなくなります。この状態が長く続くことは体内の大きなダメージにつながるため、体は元の状態に戻ろうとして酵素を出動させ、ホルモンを分解しようとします。この過程で発生するのが活性酸素です。活性酸素が過剰に発生すると、脂質・蛋白質などが攻撃され、体の正常な細胞まで傷つけてしまいます。人の体には活性酸素の害を防ぐ能力がありますが、加齢とともに衰えます。そのため、細胞へのダメージが増大・蓄積することが老化につながり、胃や十二指腸潰瘍・高血圧・頭痛・肩こり・めまいなどの様々な不調を引き起こすといわれています。

ストレスは体だけではなく、心にも大きく影響しています。心への影響は、Vol.42『老年期のうつ病について』に詳しく書かれていますので、ぜひ参考にしてみてください。

さて、これまでストレスと老化の関係についてお話してきましたが、日々の生活の中で誰もがストレスを感じており、その日常にあふれるストレスをすべて避けるのは難しいことです。出会ったストレスに上手く対処することが、病気・老化を防ぐことにつながります。また自分に合った手軽なリラックス方法を見つけ、心身のストレスを解消することも大切です。リラックス方法には決まりはなく、ポイントは緊張状態から自分自身を引き離すことにあるといわれています。

そこで、いくつか、リラックス方法をご紹介したいと思います。

入浴

入浴は全身の血行を促進、代謝を活発にし、心身の緊張をほぐします。入浴剤で香りを楽しんだり、半身浴をしたり、広々とした景色の良い温泉に行くのも気分転換となります。

呼吸法:腹式呼吸

深くゆっくりした腹式呼吸を繰り返すと、全身の緊張がほぐれます。

  • 背筋を伸ばして体の力を抜く。下腹部に力を入れてお腹をへこませながら、ゆっくりと息を吐きます。しっかり吐ききったら、少し止めます。
  • 体の力を抜くと自然に空気が入ってきますので、お腹をふくらませるようにして、いっぱい息を吸い込みます。

上記の呼吸を、ゆっくりと数回繰り返して行ないます。

アロマセラピー

アロマの香りがリラックス効果を生み出します。Vol.24『気分転換について』で、アロマセラピーについて詳しくご説明しています。

適度な運動

運動は良い気分転換となり、情緒の安定にも大きな効果があるとされています。でも気が向かない時や、体調が悪い時に無理して行うことは、かえってストレスとなります。 (*)このコラムのバックナンバーで、様々な運動方法をご紹介しています。ぜひ参考になさってください。

花や緑とのふれあい

五感で自然を感じることにより、人間に備わっている自然治癒力が回復すると言われています。花や緑の多い公園やガーデニング、家の中に花を飾って眺めるだけでも心がリラックスします。

以上、ご紹介したのは、ほんの一例です。ほかにも、「音楽を楽しむ」、「日記をつける」、「絵を描く」、「習字」、「読書」など。ご自身で気持ちがいいと感じられるものを、ぜひ行なってみてください。

自分にストレスがかかっていることを自覚し、今、自分はこんなストレスで嫌な気持ちになっているということを知り、そして自分がストレス状態にあると感じたら、それを素直に認めることが大切です。ストレスを認識し、自分に合った方法でストレスを解消し、いつまでも「若いですね」と言われるよう、健康を保ちましょう。

【参考文献】

  • ストレスによる健康障害とその予防:須田民男、かもがわ出版
  • 心のストレス病:筒井末春、PHP研究所
  • ストレスに負けない生活:熊野宏昭、ちくま新書
  • シンプル生理学:貴邑冨久子・根来英雄、南江堂

介護老人保健施設 小名浜ときわ苑

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福島県いわき市小名浜

☎ 0246-58-2300

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