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介護予防の視点介護予防の視点

Vol.3 転倒予防とその対策

こんにちは、OT(作業療法士)の猪狩です。今回は「転倒予防の重要性とその対策」についてお話しいたします。
 
高齢者の骨折の多くが転倒によって生じることは良く知られています。また高齢者の寝たきりを引き起こす主な原因の一つが骨折であり、転倒予防が大きな課題となっています。
 
さらに転倒の予防が重要である点として、転倒による外傷の有無に関係なく転倒経験そのものが、その後に自信喪失や歩行時の不安などを生じやすいということです。これによって日常の生活が不活発になったり活動範囲をせばめたりすることとなり、大きな問題となっています。
 
これは地域で元気に過ごされている高齢者の皆さんが、転んだことから"容易に介護を受ける状況になりうる"という危険性を示しています。具体的には"転んだらどうしよう"と思うことから、積極的に動こうとしなくなり、しだいに筋力が低下して日常生活に支障をきたし、最終的には全身が弱って寝たきりになる危険性があるということです。
 
高齢者の体の機能は生活習慣に影響を受けるため、非常に個人差が表れると言われています。日頃から屋外で活動する人は高い運動機能を維持することができますし、一日中家で過ごされる方の運動機能は衰えてしまうのです。
 
元気に年を重ねるために、運動はとても重要であるということです。「年寄りがいまさら運動しても・・・」と思われる方がいるかもしれません。確かに年をとるにしたがって運動機能は衰えますが、毎日少しずつ運動すれば、次第に筋力がつきバランス能力も改善できるのです。
 
今からでも決して遅くはありません。運動は“転ばぬ先の杖”になるのです。
 
それではどのような運動をすれば効果的なのでしょうか?
 
下記に掲載しました転倒発生要因に関する研究では、注意力の低下に加えて足の関節(くるぶし) の動きと足指の大地をつかむ力が低下したとき、転倒しやすいと報告されています。そこで研究の結果を参考にした、自宅でもできる簡単な体操をご紹介いたします。
 
1.足指マッサージ
足の指を柔らかくすることで、足底でバランスが取りやすくなります。
 
(1)足の指を一本ずつ前後左右に動かします。
(2)手の指を足の指の間に入れ、足指を反らせて足裏の筋肉をゆっくり伸ばします。
   *痛みがある場合は無理しないでください



2.足指タオル体操
足指で踏ん張る力を高め、バランス能力の改善を助けます。
タオルの上に両足を乗せ、足指でタオルを少しずつたぐり寄せ、足の裏に入れるようにします。



3.アキレス腱のストレッチング
足首の周囲の筋肉を柔らかくすることで、つまずきにくい足に近づきます。
テーブルや台に手を着いて、後ろ足のひざを伸ばしアキレス腱をゆっくり伸ばします。
その際、はずみを付けずに30秒ほど静止すると、ゆっくり筋肉が引き伸ばされて柔らかくなります。
左右両方行いましょう。(*痛みがある場合は無理をしないでください)



4.足首体操
足首の筋肉を鍛えることで、小さな段差を乗り越えられるようにします。
(1)イスに座り、ひざの上に手を置いて上半身の体重をかけながら、かかとを上げます。
(2)ゆっくりかかとを下ろし、体を起こします。
(3)ひざの上に手を置いたまま、つま先をできる限り上にあげます。
(4)つま先をゆっくり下ろします。
(1)〜(4)をゆっくり繰り返します。



最後に、転倒を予防するための対策として、運動以外に何があるのかお話しいたします。
 
改善できる転倒の危険因子としては、以下のものがあげられます。
(1)視力障害(白内障・緑内障・眼鏡不適合など)
(2)鎮静剤や降圧剤などの薬物服用による副作用のチェック(ふらつき・めまい・発作など)
(3)家屋内外の物理的環境の整備(小さな段差・電気コードの位置・つまずかない工夫)
 
これらの危険因子は、先ほど述べました研究結果にあった、“注意力の低下”と関わりの深い項目でもあります。すべての危険因子を改善することは難しいですが、この中の一部でも改善できれば転倒発生に大きな違いがあると考えられます。もう一度、危険因子をひとつずつ見直してみることをお勧めいたします。
 
 
参考・引用文献
鈴木隆雄・大渕修一監修:指導者のための 介護予防完全マニュアル (財)東京都高齢者研究・福祉振興財団 2004年
村田伸・津田章:在宅障害高齢者の身体機能・認知機能と転倒発生要因に関する前向き研究 理学療法学 33:97-104 2006年

介護老人保健施設 小名浜ときわ苑

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