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介護予防の視点介護予防の視点

Vol. 43『今年こそ! 運動を習慣化する』

新年あけましておめでとうございます。小名浜ときわ苑施設長の鯨岡栄一郎です。今回で43号にもなる当コラムですが、本年もみなさまにとってより有益な情報をご提供してまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

さて、一年の計は元旦にあり。私事ですが、今年最初の大きな目標として、2月開催のいわきサンシャインマラソンにてフルマラソン完走を掲げています。今までずっと運動らしい運動はしてきませんでしたから、かなり無謀な挑戦かもしれません。

本大会の今年の参加者数は、約4200名だそう。前回は応援する側でしたが、かなりお年を召された方も多く参加されていたのには驚きました。ちなみに、前回大会の記録を見てみますと、70歳以上男子の部では1位が3時間40分、女性の部の1位は3時間58分という記録でした。当施設の30代後半の男性が参加し、5時間強という記録でしたから(これも素晴らしいのですが!)驚異的ですよね。

今、家の近所を走り始め、少しずつ準備をしている最中です。改めて驚いたのですが、本当に走れないものなんですね・・。5分走るのもやっと、という有様。そして、体の重いこと!当初、ご他聞にもれず膝関節や股関節を少し痛めました。そう、初心者が最初に痛めるのが、膝関節です。そのほとんどの原因が「筋力不足」にあります。また、全体のフォームや足の接地の仕方にも原因があります。

ランニングの着地時の衝撃は、体重の3〜5倍にもなります。数百kgという衝撃が何度も関節にダイレクトにかかるため、筋力が弱ければ故障が起きても不思議ではありません。これは、通称「ジョギング膝(膝蓋軟骨軟化症)」と呼ばれます。膝には「お皿」、つまり膝蓋骨といわれる骨があります。膝の裏側の軟骨は、通常消しゴム程度の固さがありますが、ジョギング膝になると、そこにヒビが入り、 ボロボロと崩れ出すほどになってしまうそうです。

そこで私は入念なストレッチングやスクワットなどの運動を開始。走る際もきちんと踵から接地するようフォームに気を付けることにより、痛みはだいぶ回避できるようになってきました。

走るようになった副産物としては、何と言っても走った後の気持ち良さです。これは格別ですね。また、食べる物や量にも気を配るようになりました。体重・体脂肪率のチェックも常にしています。体力が少しずつ向上してきたのか、仕事中も体の調子が良いですね。筋肉がつき、また体脂肪が減ってきて少し体が締まってきたように感じます。まだ短期間ですが、心身の変化を感じているところです。

ところで、当施設においては、昨年から特定高齢者施策運動器機能向上事業が始まり、10名近くの方たちが転倒予防などを目的とした各種運動を行っています。非常にご好評を得ています。利用者さんたちに参加した動機を尋ねてみますと、みなさん口々に「家にいるとどうしても運動をさぼりがちになっちゃうから」とおっしゃいます。

また、私が訪問リハビリで担当している利用者やその主介護者の方も体力づくりの一環で近所の散歩を日課とされている方は多いですね。みな健康は最大の関心事であり、今の状態を何とか保ちたい、というのは共通の願いのようです。






私のように普段何もしていない状態からいきなり走り出すことは決してお勧めできませんが、まずはシンプルに歩くことから始めてみてはいかがでしょう?(歩くことに関しては、当コラムにおいて、これまでも『Vol.7:筋と歩行』『Vol.17:ばいばいメタボ散歩術』『Vol.23:歩くことの大切さ』で触れていますので、ぜひご参考にしてみて下さい。)

屋外に出て歩くということは、
まず空気が違います。深く呼吸することにより、全身に酸素が行き渡ります。
室内と温度が違いますので、皮膚からの感じ方が違います。
日光に当たることでビタミンDの生成やセロトニン(人間の精神面に大きな影響を与える神経伝達物質)の分泌にもつながります。
距離や時間などの目標を設定することで、前回からの進歩を実感することができます。
車に乗って見ている風景と見え方や感じ方が違います。
歩きながら色々なことに思いをめぐらすことができます。普段の自分を振り返ったり、逆に無心になることもできます。
近所の方とのあいさつなどのコミュニケーションができ、地域での存在(あの人はあの辺に住んでいる等)を知らせることができます

など、多くのメリットが期待できます。 室内における(リハビリ時だけの)歩行訓練に効果がないとはもちろん言いませんが、実際の生活と少しかけ離れているのではないか、と思うのも正直なところです。例えば、施設内でのリハビリにおける歩行訓練は熱心に行いますが、なかなかご自宅にて屋外を実際に歩行することに踏み切れない方も多くいらっしゃいます。しかし、転倒や交通事故などの心配もありますから、その際はどなたかの協力を得られると良いかもしれませんね。

もしかすると、加齢や体の不自由さ、疾患による疲労しやすさの問題があり、運動や散歩はおっくう、と感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、実は体を休ませて温存するから体力が出てくるのではなく、むしろ体を動かすから元気になり、活力が出てくるのです。

Emotion(感情)はMotion(動き)から来るといいます。体と心の状態は相関関係にあり、体を動かすことで、瞬時に気持ちを切り変えることができます。思考ではなかなか変えることの出来ない感情や思考であっても、体を動かすと「あれ?」というくらい簡単に切り変えることができてしまうものです。ちょっと疲れ気味だからこそ、少し体を動かす。外に出て、空気を吸い、歩いたり走ったりしてみる。今、私自身が身をもってその良さを噛み締めている状態です。何よりも、まずは健康!ですもんね。

タイムリーにも本年はうさぎ年です。ぜひうさぎの如くピョンピョン飛び跳ねるような1年にしてみませんか!

参考資料
「奇跡力」井上裕之 フォレスト出版

介護老人保健施設 小名浜ときわ苑

介護老人保健施設 小名浜ときわ苑

福島県いわき市小名浜

☎ 0246-58-2300

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