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介護予防の視点介護予防の視点

Vol.38 外出のススメ

みなさん、こんにちは。暑い日が続きますが、熱中症(先月のコラム)にはなっていませんか?毎日水分補給が欠かせない、リハビリ部の高萩です。

家に閉じこもらず、外出してみましょう!

8月は、各地でお祭りが開催される季節となり、浴衣を着て出かけたくなる気持ちになるのは、私だけでしょうか。そこで今回は、「家に閉じこもらず、外出してみましょう!」というテーマで、当苑でも実際に取り組んでいる活動を踏まえながらお話していきます。

さて、質問です。あなたは普段、どのくらいの回数で外出しますか?(隣近所へ行く、買い物、通院を含みます)

週に1回以上は、外出する。→よく行く場所はどこですか?
月に1〜3回は、外出する。→よく行く場所はどこですか?
ほとんど、または、全く外出しない。
1は「非閉じこもり」、2または3に該当した方は「閉じこもり」にあたります。(「閉じこもり」スクリーニング尺度より)

なぜ閉じこもりになってしまうのでしょうか?閉じこもりの高齢者の特徴として以下の3つの要因が関連しているようです。

身体的要因
歩行能力の低下
認知機能の低下
散歩、体操や運動をほとんどしない
下肢の痛み
生活体力の低下 など

心理的要因
主観的健康感の低さ
生きがいがない
転倒不安による外出制限があること
うつ傾向である など

社会・環境要因
高齢であること
集団活動への不参加
家庭内役割が少ない
社会的役割の低さ
親しい友人がいない
日中過ごす場所が家の中、あるいは自室のみ など

もし、上記の理由に当てはまるものがあれば少し自分の生活を見直す必要があります。それは、なぜか?

「閉じこもり」を生活空間上から見た場合、外出をせず、家の中(居室)内のみの生活空間としている状態といえます。閉じこもることで、身体的・心理的・社会的・環境的にも悪循環を招き、最後には要介護状態へなる可能性もあるのです。閉じこもり高齢者は日常生活の行動範囲の縮小による体力や身体活動量の低下から、最終的に「寝たきり」に移行しやすいと考えられています。

その予防として、㈰家庭内の役割、㈪自己効力感の向上・体力向上、㈫健康づくり・社会における役割、㈬生活全般の活性化 と状況を改善していくに伴い、生活空間がベッド・布団→自室→家の中→敷地内→屋外・地域へと拡大していきます。

当苑での取り組みについて







ここで、当苑での取り組みについてご紹介いたします。

当苑では、桜の季節には花見へ出かけたり、小名浜港の市場を見学しに行ったり、お弁当を持ってフラワーセンターへピクニックに行くなどの、外出を兼ねた企画を立てて利用者へ外出する機会をつくっています。

今回私が実際に、利用者とともに近所の大型ショッピングセンターにて『買い物・外食レクレーション』に参加する機会を得たので、ご紹介いたします。

参加利用者4名(女性1名、男性3名、うち要介護1:3名、要介護3:1名)
職員4名

普段は施設内で生活する利用者にとって、外出は外の環境に触れるとても良い機会でもあります。外出当日は、天候にも恵まれ風がとても気持ちよい日でした。利用者は、外出するので服装にも気を使い、「お金は持ったかな?」と心配する声も聞かれました。

ショッピングセンターに着くと、それぞれ利用者1名に対し職員が1名で対応する形をとり、利用者主体での買い物がスタートしました。

ある利用者は書道が好きで前から筆ペンが欲しいとのことで、真っ先に文房具コーナーへ足を運んでいました。お菓子が好きな利用者は駄菓子コーナーへ行き、普段売店には置いてないようなお菓子を手に取り、どっちにしようかと迷う表情をしています。職員に対して「あんたは何が食べたいの?」と、さつまいものお菓子をとってみせる利用者もいました。普段、リハビリでも長い距離が歩けない利用者も、買い物中は足が軽いのでしょうね。休憩を取らずに品定めに夢中で…。

お昼の時間はフードコーナーで好きな物を自分で選び注文します。施設内での食事にはなかなか出てこないそばやラーメンを注文する方や、お好み焼きが食べたいとおっしゃる方もいました。メニューが多くてなかなか決められない方もいます。

みんなの注文したものが揃いました。「いただきまーす」

お腹が一杯になり少し休憩した後、ゲームコーナーに興味を示す方がいて、予定にはなかったのですが、みなさんでゲームに挑戦しました。みなさん顔が真剣です。周りで見ている利用者も声援を送っています。

3時間という短い時間ではありましたが、利用者の表情は普段の施設生活では見られないものでした。広いショッピングセンターでしたが、怪我もなく十分満足した様子がありました。「また、みんなで買い物に出かけたいな。」「ゲームが楽しかったな。また行きたいもんだなぁ。」という声も聞かれました。

外出は、生活空間を広げることに繋がっていきます。「外出の頻度が多いほど、健康維持や回復に効果がある。」という報告もあります。家族や友人が一緒になって、どんどん外に行ってみましょう。きっと心身ともに元気になることでしょう!

「今日はちょっと外にでてみましょうか。天気が良いから…」

参考文献:

  • 閉じこもり予防・支援マニュアル 平成20年12月 研究班長:福島県立医学大学学部 安村誠司
  • そろそろ親のこと オヤノコト.net
  • 閉じこもり、閉じこもり症候群。介護予防研修テキスト。社会保険研究所 竹内孝仁

介護老人保健施設 小名浜ときわ苑

介護老人保健施設 小名浜ときわ苑

福島県いわき市小名浜

☎ 0246-58-2300

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