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Vol.27  リスクマネジメントの視点から考える転倒予防

こんにちは。小名浜ときわ苑のリスクマネジメント委員会委員長、作業療法士の高野栄吉です。今月は、「リスクマネジメントの視点から考える転倒予防」についてお話したいと思います。

リスクマネジメントって何?
 
みなさんは「リスクマネジメント」という言葉をご存知ですか?「リスク=危機・危害等。マネジメント=管理する」で、定義としては、「組織がその使命や理念を達成する為に、その資産や活動に及ぼすリスクの影響から、最も効率よく組織を守るための一連のプロセス」となります。う〜ん、ちょっと難しいかもしれませんね。
 
転倒予防にあてはめるとわかりやすいと思います。「転倒して、骨折などにいたらないように、様々な視点から転倒の危険がないように検討し、事前に対応する。つまり、転倒を未然に防ぐ為の一連の過程」となります。こうなると、ちょっと分かりやすくなってきましたね。
 
そして、実際に事故が起きた時の捉え方にも特徴があります。もし施設で転倒事故が起きた時にみなさんはどうすると思いますか?関係者に「注意が足りない」と叱責すればいいと思いますか?
 
リスクマネジメントでは「人は誰でも間違える」と考えます。事故を起こした関係者を責めるのではなく、その事故がおきた組織や仕組みにこそ問題があると考えるのです。たとえ不注意で起こってしまった事故でも、「何が不注意だったのか、見るべき視点は何か、具体的にどう介助・対応したらいいのか」等を検討します。組織としての働きかけや教育が足りなかったことを原因として捉え、やり方をマニュアル化してみんなが同じ方法で安全に介助出来るように徹底するのです。

当苑のリスクマネジメント委員会の活動
 
当苑では、リスクマネジメント委員会を定期的(時には緊急に)開催し、より安全なサービスを提供するための環境整備やシステム作りなど、様々な活動に取り組んでいます。
 
その一つに、事故の発生を未然に食い止めるための、毎月の苑内外のパトロールがあります。名付けて『安全を見守り隊』です。この活動は、他部署の職員が見ることで、「システムがきちんと運用されているか、安全な環境を維持できているか、新たなリスクとなる要因はないか」など、普段職場で見落とされている危険因子を発見することが目的です。パトロールで確認された問題点は、関係職場に返され、改善策を考えることはもちろん、全職員に掲示され、他部署の職員も目にすることから、職場全体の環境整備への意識付けにもつながっています。

自宅でも転倒予防のリスクマネジメントをしてみませんか?
 
パトロール活動で確認された事例から考えられる、皆様のご自宅で出来る工夫をいくつかご紹介します。
 

その1. 床を這うコード
 
部屋のテレビの配線が壁から床にかけて這っており、配線につまずいて転倒する危険性がありました。

<当苑の対応>

床に配線が走らないよう配線カバーでまとめ、壁伝いに設置し、つまずかないよう床の環境を整えました。
 
<自宅での視点・工夫の提案>
ご自宅での電気ポットやコタツのコードはどうですか。通り道を横断し、つまずき易くなってはいませんか。転倒しないよう、配線をひとつにまとめたり、配線カバー・U字型のクギ・フックなどを使って足元をすっきり出来るといいですね。
 

その2. 壁に立てかけたベット柵やパイプ椅子
 
ベットの柵や利用者様への面会などで使用するパイプ椅子が、壁に立てかけたままという状況が一部みられました。これは、杖や歩行器で歩く方が柵や椅子に引っかかり転倒する危険性があります。

<当苑の対応>

ベットには、ベット柵をはずした時に差して置けるよう、ベッドの足元の板側に差し込み口があります。リネン交換や移乗などで一時的にはずした柵は、必ずそこに設置するようマニュアル化し、統一を徹底しました。
 
パイプ椅子は、タンスなどのしっかりした家具と壁の間に倒れないように収納することとし、ご家族様にも使用後に収納していただくようご協力をお願いしました。
 
<自宅での視点・工夫の提案>
ご自宅でも、ついうっかり柵や杖を壁に立てかけてしまうことはないでしょうか。他にも、足腰が不自由な方の転倒予防には、廊下においてあるスリッパや部屋干ししている洗濯物など、つまずきやすいものや引っかかりそうなものを通り道に置かない・敷かないなどの環境整備が大切になります。
 

その3. 家具の上にある沢山の写真立て
 
利用者様が車椅子で移動するたびに、ぶつかって写真立てが落ちて利用者様がケガをしまいそうだと担当職員が思案していました。

<当苑の対応>

ご家族と本人様の了解を得て、写真をコルクボードに貼り付けて飾るように変更しました。
 
<自宅での視点・工夫の提案>
みなさまのご自宅でも、旅行で買ったお土産などが飾り棚やタンスなどの上においてありませんか?そこの棚に触るといつもこけしが揺れてガラス戸にあたっている‥なんてことは?倒れてきてけがをすることがないようなディスプレイの仕方や飾る場所を検討されてはいかがでしょうか。

お金を使わないちょっとした工夫
 
転倒予防の為に、必ずしも大掛かりなバリアフリーのリフォームが必要と言うわけではありません。その方にもよりますが、家に段差があるけれどリフォームするのはちょっと‥といった場合でも段差につまずかないよう色の濃いテープを貼って目立つようにするとか、足元を照らす照明を設置するなどのちょっとした工夫で、転倒を防ぐことも出来ます。
 
皆さんのご家庭でもリスクマネジメント・パトロールをして転倒予防の為の環境整備を考えてみませんか。いろいろな発見があるかもしれませんね。

介護老人保健施設 小名浜ときわ苑

介護老人保健施設 小名浜ときわ苑

福島県いわき市小名浜

☎ 0246-58-2300

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