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Vol.22  化粧療法の力

こんにちは、リハビリテーション部の高萩裕子です。
桜の咲く季節・・。新年度も始まり、みなさんそれぞれ新たなスタートを切ったことと思います。私は当苑に就職して3年目に入りました。初心を忘れず、「日々の仕事を楽しく」という気持ちで、利用者様と関わっています。

さて、今回は去る平成21年1月24日に、いわき食介護研究会市民講習会で山野美容芸術短期大学美容福祉学科 准教授・臨床心理士 野澤桂子氏による「化粧療法」についての研修会に参加し、とても興味を持ったのでこの場をお借りし、みなさまに研修内容を踏まえながら『化粧療法の力』をお伝えいたします。

あなたは、「化粧をする」ことに対して、どのようなイメージを思い浮かべますか?  
・女性が顔をきれいにするもの
・若返って健康に見える
・気持ちが引き締まる
・安心する
・一日のスタート・・など
 
 
さて、化粧をすることで私たちの身体にどのような影響や効果が現れるのでしょうか?

【化粧を用いた関わり】

五感を刺激する
視覚:鏡の中で変化していく自分の姿やきれいな色を見る
聴覚:パフを叩く音、化粧の瓶を振る音
触覚:ブラシの感覚や心地よいマッサージ
臭覚:化粧品のにおい、良い香りを嗅ぐ
※味覚以外のあらゆる感覚を使うので、脳の活性化につながります。
 
コミュニケーションの促進
化粧を行っている間に、利用者様と職員間で「きれいになりましたね」「色がきれいですね」などのコミュニケーションが生まれてきます。人は、他者に認められることで自尊感情が高まります。その良い機会となるのです。
 
心身機能の調整
化粧を通して生き生きとした自分を思い出すこと(回想法)や、コミュニケーションを図ることで、心身機能の活性化が期待できます。また、気分が高まるだけではなく、気持ちが落ち着き問題行動(例:徘徊など)が減るのです。気分の改善や身体の変化は副交感神経を優位にすることで心身のリラックス効果も認められているそうです。このように、化粧療法は高齢者の精神活性化につながる可能性があります。
 
 
※注意点
1)対象者が、鏡像認知が可能かどうか、つまり、鏡の中で変化しているのは自分だという意識があるかどうかが一つの基準となります。そのような方には、ハンドマッサージやネイルなど、実際に目に見えるもので体感できる手段が必要です。
2)受動的な化粧よりも、自ら化粧をする能動的な化粧のほうが、効果が優れているそうです。能動的な化粧は精神面だけでなく、生活全般をも活性化することが示唆されています。

今回研修に参加し、化粧療法の取り組みについてとても楽しく学ぶことが出来ました。化粧とは、単に美への追求だけではなく、化粧により心理的効果として気分が覚醒状態になったり、不安が軽減したり、人に対して積極的に関わろうとしてみたり、満足度が向上したりするなどの効果が期待できること。また、身体的効果としてはリラックス効果や精神鎮静の意味もあることを知ることが出来ました。

当苑では、以前まではレクリエーションで『おしゃれの日』があり、メイクのボランティアさんがいらっしゃっていました。鏡を利用者様の前において、化粧水をコットンにとって顔をマッサージしてから、メイクを始め、最後に口紅を塗っていただいていました。
 
その際、利用者様に声をかけると、最初のうちは「私はいいわよう」と拒む方もおられましたが、きれいに化粧されてくると表情が明るくなり、写真を撮ろうとするとにっこり笑う方もいらっしゃいました。

【今後の展開】

いくら年を重ねても、女性はいつまでも女性のままであり、きれいでいたいと思っていると思います。今回の研修の中でも、他の施設のケースを見てきましたが、数人から集団のグループになっており、職員から啓発して取り組んでおられました。
 
当苑でもレクリエーションを通して、たとえば毎月開催される「誕生会」で主役になる方に化粧を行なってみたり、外出する行事の際に「口紅だけでも塗ってでかけてみよう」などの声かけをして、「きれい」でいることの機会を作ってもいいのではないかと考えました。

【最後に】

普段の生活で自分の顔を鏡で見る時間はありますか?
 
ふとした時に鏡を見ると、自分の中での健康状態であったり、シワの数、顔のたるみ、顔のくすみや顔色など情報が得られる事があると思います。まずは、鏡の中の自分と対面して、笑ってみたり怒った顔をしてみたり、口をとがらしてみるなど表情筋を動かしたり、化粧水をつけてマッサージするだけでもいいと思うのです。
 
買い物へ行くときや、孫に会うときに化粧をすることで、「今日はいつもと違うね」「おばあちゃん、今日はきれいだよ」などの会話が生まれ、コミュニケーションを通して、また新たな自分を発見することが出来ると思います。
 
 
【名言をいくつかご紹介いたします】
 若い女は美しい。しかし、老いた女はもっと美しい。 - ホイットマン
 十六歳で美しいのは自慢にはならない。でも六十歳で美しければ、それは魂の美しさだ。- M.ストープス
  http://www.meigensyu.com/authors/view/1285/page1.html
 いつも自分を磨いておけ。あなたは世界を見るための窓なのだ。- ジョージ・バーナード・ショー
  http://www.meigensyu.com/authors/view/1343/page1.html
 
【参考・引用文献】
介護たすけあいホームページ あったかタウン
化粧の歴史(世界編)(日本編)
肌に美しい未来を POLA

介護老人保健施設 小名浜ときわ苑

介護老人保健施設 小名浜ときわ苑

福島県いわき市小名浜

☎ 0246-58-2300

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