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介護予防の視点介護予防の視点

Vol.12 「お尻歩き」のススメ

こんにちは! 作業療法士の高野栄吉です。
今回は、ご利用者様のリハビリでも行なうことのある動作でもあり、今、美容や腰痛などにも効果があると言われている「お尻歩き」についてご紹介したいと思います。

この「お尻歩き」はその名のとおり、床に座って足を伸ばし、お尻を使って歩く運動です。実際にやってみるとお尻やおなかの筋肉をかなり使っているのが実感できると思います。特に大殿筋(お尻にある大きな筋肉)が使われているのが分かります。
 
また、この「お尻歩き」はお体の不自由なご利用者様のバランス能力を高め、特に体幹(頚部・胸部・腰部・臀部を含めた胴体部分)の滑らかな動きを引き出す運動としても効果があります。
 
当苑で、お体が不自由なご利用者様などの動作を観察すると、ほとんどの方があまり体幹を動かさないで動作を行なっておられます。これは、痛みや麻痺など何らかの原因によって体の一部分が動きづらくなった場合、その動きづらい体を何とか動かそうと、ふらついて不安定な体幹を必死に固めて仮の安定を作り、なおかつ、動く腕や足を使い過剰な努力を費やすためです。
 
みなさんも突然の腰痛や首を寝違えてしまった場合、痛みのため体を固めた動きをすることで、いつもは簡単に行なっている寝起きがとても大変でたどたどしくなった経験などはありませんか?腰や首が動かせない状態がいかに動作全体に影響しているかが分かると思います。そのような動きが習慣化してしまうと、たとえ訓練によって、最初に不自由だったところの筋力が改善し痛みが軽減されても、体幹の動かない動作が身についていることで、なかなかスムーズな歩行などが行なえないことが見られます。
 
また、長年体幹を使わないでいると、当然お尻・おなか・背中など体を支える大きな筋の筋力も低下してさらに姿勢が悪くなり、体の負担も多くなり新たな疼痛も出現してくる、といった悪循環も起こってしまいます。
 
そして、これはみなさんにも無関係ではありません。実際、足を組むとき常に左が上とか、カバンを肩にかけるのはいつも右とか・・・普段の生活習慣でも無意識のうちに良く使う体、あまり使わない体、つまり『癖』があると思います。特に体幹については手足と違い動作の中でも意識化されづらい所なので、知らず知らずのうちに一部分に疲労がたまり突然の腰痛として現れる、なんてこともあるかもしれません。
 
そんな、意識しづらい体幹の動きを再確認でき、また大殿筋や腹筋など体幹を支える筋肉の筋力向上にも効果がある運動として、「お尻歩き」は期待できると思います。

では、具体的に説明しましょう。

1.姿勢をまっすぐにする

腰を立てるように意識してすわり、
背筋を伸ばします。

 

2.両足をそろえて膝を上に向ける

片方の足が外に向いていたり、両方の足が
離れていると左右の筋肉のバランスが崩れて
上手く進めません。

 

3.肘を軽く曲げウエストをねじる

上体を回転させると前に進みやすくなりますし、
腹筋群のストレッチと筋力アップの両方が
望めます。

4.まっすぐ進む

まっすぐ進もうとすることで左右のバランスが
整ってきます。

上記のポイントを守って前歩き後ろ歩きを10〜15回ずつ交互に行なってみましょう。
なお、筋力のない人や下半身の筋肉や関節に痛みのある人は無理に行なわないでくださいね!
 
 
参考文献:「安心」2008年1月号 吉田瑞書

介護老人保健施設 小名浜ときわ苑

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福島県いわき市小名浜

☎ 0246-58-2300

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