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介護予防の視点介護予防の視点

Vol.8 季節と身体

こんにちは!私、第8回目の介護予防コラム担当となりました、理学療法士の阿部真由美と申します。ここまでたくさんの介護予防についての話がありましたので、少し視点を変えて今回は身の回りの話をしたいと思います。

寒い季節になると、「体が硬くなる」とか「動きにくい」など、何となく体が思うように動かない、なんてことがありますよね。特に、脳梗塞等で体の半身に麻痺がある方などはよく分かると思います。よく聞く話ですが、春や夏は運動していても体が軽いのに、秋や冬になると体が重くなるなんてことをよく聞きます。
 
これは、筋肉が硬くなることが原因で起こります。
 
第一に、人間の体は、常に熱を産生しています。これは、食事から得られるエネルギーを心臓などの各臓器へ運ぶために小さく分解され、その際に、熱が発生します。この熱は、体を一定の温度へ保つために使われたりします。
 
ここで、外気の気温が下がり、外気に触れた筋肉はどうなるかということ・・・
 
体より外の気温が低くなると、体温が下がらないように、この熱が外へ放出しないよう、急激に筋肉が収縮します。例えば、人は寒くなると、小さく体を丸めます。それと同じです。できるだけ外へ熱が逃げないように、筋肉も小さくなり、硬くなってしまいます。筋肉が硬いとケガをしやすく、いつもの力が発揮できません。筋肉は、ある程度の弾力性が保たれています。筋肉はある程度の弾力性がないと本来の力を発揮することができません。

第二の原因としては、寒くなると末梢血管が収縮してしまい、筋肉への血流も減ってしまいます。そのために、筋肉の温度も低くなると酸素をとり込むことが減少するため、筋肉は酸欠になり、ますます硬くなってしまいます。特に、全筋肉の約70%は足にあるので、足の筋肉は寒さの影響を強く受けます。そのために、筋肉は硬くなってしまいます。
 
筋肉の熱産生能力は基礎代謝(生きていくのに「最低限必要なカロリー」のことです。この場合の「生きていく」というのは活動をしない=寝ている状態を示しています。)で全体の20%、運動するとその3倍以上になります。

ところが、女性は男性より筋肉の割合が10%以上も少なく、皮下脂肪が10%も多いので、冷え症になりやすいといえます。また、加齢で体が冷えやすいのは代謝を促し熱を作る甲状腺ホルモン、交感神経のアドレナリン、女性ホルモンなどの内分泌が減少してしまうからです。

では、対処法としてどのようにすればよいかというと・・・
 
まず一つに、運動や活動する前に、少し体を温めることが重要となります。例えば、朝目覚めたとき、すぐ起きるのではなく、布団の中で足首の運動や体をねじる運動など体に「今から動きますよ」というサインを与えてあげることが重要です。本来は、全身のストレッチを行なっていただければとても良いのですが・・・。なかなか難しいと思いますので、5分程度布団の中で運動するだけでも違うと思います。
 
次に、体を冷やさないようにホッカイロや下着を多く着るなど工夫するのもいいと思います。
 
第三に体が温かくなるような食事を摂るということです。例えば、野菜でも、生野菜では体が冷えてしまいます。温野菜にしたり、スープにしたり、豚汁なども良いと思います。
 
その他にも、筋肉の働きを効率良くする食べ物を食べることもお勧めします。その食べ物は、ビタミンB1、カルシウムです。ビタミンB1は糖質(炭水化物)がエネルギーに代わるのを助け、不足すると筋肉の動きが鈍くなり動かしにくくなります。豚肉、ウナギなどに豊富に含まれています。カルシウムは筋肉の伸び縮みに影響があり、不足すると筋肉痛を起こしやすくなります。牛乳や小魚、海草などに多く含まれています。また、冬場は寒さにより血流が低下しやすいので、ビタミンEをたっぷり摂って血液の流れを良くしましょう。ウナギ、ナッツ類などに豊富に含まれています。
 
 
これからまだまだ寒くなります。寒い冬をケガなく、健康に過ごしていくためにも、適度な運動と食事などに気をつけながら暮らしていきましょう。頑張り過ぎず、毎日の積み重ねが大切です!
 
 
[参考文献]
シンプル生理学 改定第4版 貴邑冨久子・根来英雄共著 南江堂 2000

介護老人保健施設 小名浜ときわ苑

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