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介護予防の視点介護予防の視点

Vol.4 寝たきりにさせないご家族の関わり

こんにちは。PT(理学療法士)の平山友恵です。
今回は、高齢者の方の寝たきり防止のため、ご家族の関わりについてお話しさせていただきたいと思います。
 
高齢者の方は、風邪を引いて2〜3日寝こんだだけで筋力が低下し歩けなくなってしまうことや、ちょっとした病気が原因で、精神的な落ち込みや認知症の症状が進行してしまうことがあります。
 
病気のときは安静にすることが大切ですが、症状が治っても寝こんだ生活を続けていると、身体を必要以上に休ませてしまうことで起こる「廃用症候群」になってしまいます。

高齢者の方がなりやすい悪循環の例を挙げてみましょう。
 
腰が痛い→少し寝て休んでいよう→痛みがとれたから歩いてみよう→体力が落ちていてすぐ疲れる→動きたくない→ますます筋力が低下してふらつく→危ないからなるべく動かない→歩けなくなる→転倒、骨折。
 
ご家族の関わりの中でも…
「おばあちゃん危ないから何もしないで休んでいて」「大変そうだからやってあげる」→役割がなくなる→意欲低下→何もできない、何もしたくない→認知症の進行、身体の機能の衰え。
 
なんでもしてあげたほうが簡単だし本人も楽だろう、と時間をかければ本人でも行えることを、介護者がしてあげてしまえば、廃用症候群を作りだしその悪循環を進行させることになってしまいます。

だからといって、全部自分でやりなさい!ということではありません。
 
毎日の生活の中で、身体を動かすこと全てがリハビリになります。
ベッドから起きあがる、服を着替える、顔を洗う(ひげを剃る、お化粧をする)、ご飯を食べる、トイレに行く、近所の友達とお茶を飲みながらおしゃべりする、買い物をする、料理を作る、洗濯物を干してたたむ、掃除をする、風呂に入る、歯を磨く、寝る。
 
今、介護が必要になっている方も、できることがありませんか?
近所に散歩に行ける、食堂まで歩ける、トイレまで歩ける、ポータブルトイレに乗り移れる、座れる、布団から起きあがれる、寝返りができる、首が動かせる、手が握れる…。
 
杖があれば…、手すりがあれば…、完全にできなくても誰かに少し助けてもらえば…。
やり方を工夫すれば…。
 
今の状態でできないことも、やり方を工夫すれば、福祉用具を使えば、少しでも助けがあれば、できることかもしれません。
 
困ったときはぜひスタッフに相談してください。
ご家族と一緒に、今行っている様子と、身体の状態から、できることを見つけだし、今の力を生かす介護方法や環境整備を検討していき、高齢者の方にできるだけ活動的に暮らしていただくお手伝いをしていきたいと思います。

以前、あるご家族の方が「自分も昔は親におしめとっかえてもらってたんだから〜。」と笑顔でおっしゃっていました。感激しました。スタッフは、高齢になってからのご本人しか見たことがありません。元気だった頃のご本人を知っているのはやっぱりご家族です。介護の負担やご本人の変化はご家族にとって大変なものだと思います。『子育てのお返し』、お年寄りを子供扱いするのは失礼ですが、そんな気持ちであたたかく見守れるのは素敵だと思いました。
 
できないところではなく、できるところを見つけてあげる、一緒に喜んであげる、どうしてもできないところを手伝ってあげる、というご家族のあたたかい関係が高齢者の方を元気にしていくのだと思います。
 
 
[参考文献]
標準リハビリテーション医学、株式会社 医学書院、上田敏他、2000

介護老人保健施設 小名浜ときわ苑

介護老人保健施設 小名浜ときわ苑

福島県いわき市小名浜

☎ 0246-58-2300

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