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患者さんの声患者さんの声

当院の腎臓内科に通院されている患者さんの中で、月150名近くの方が食事療法をされています。
食事療法は、制限が多くストレスが高まるイメージがあるのですが、日々を楽しんでおられる患者さんもいらっしゃいます。

今回は数名の方の日常や食事療法に対する思いを寄稿していただきました。

A・Y様(男性・66歳)

今年の春に左腎臓の摘出手術を受け、残された右腎臓は生まれつき小さく腎機能が低下していたため、川口先生より食事療法をしてみましょう!と言うことになり、エネルギ-・2300kcal(36kcal/kg)・たんぱく質40g(0.63g/kg)・塩分7gでの食生活が始まりました。

私は無類の食いしん坊でしかも美食家でしたから、肉・魚は大好物、しかも濃い味が好きでした。
これらが根底から覆るわけですから心中穏やかではありません。

しかし調理担当の娘の方がもっと大変だったようで、毎日の食事をg単位で調理し、メニュー作りも大変で、出来るかなという気持ちと、何よりも私の健康の鍵を握る立場になり、プレッシャーを感じていました。
腎臓病の食事の本を3冊も購入し、それを基にメニューの研究もして、今は大分慣れていろいろ応用し楽しんでいるようにも見えます。自信もついたようです。

食事ノートも几帳面に朝・昼・夕ごとにエネルギー・たんぱく質・塩分と計算し、まとめてくれています。
料理本のページも記入してあり、作り方は本で確認しています。

今は1/25ご飯や薄味で肉の少ないおかずに慣れ、食事の時間が楽しみです。
娘の頑張りもありメニューが増えスパゲッテイ・グラタン・サンドイッチも登場します。
味付けもだしを効かせたり、酢を上手に利用し美味しく仕上げてくれています。

健康管理で心掛けていること

  • 1.娘の用意した食事を徹底して実行する
  • 2.水分を2リットル摂る
  • 3.血圧・体重管理(パソコンでグラフ化)
  • 4.ウォーキング1.5時間・ゴルフの素振り
  • 5.月2回のゴルフのラウンドを楽しむ

自分と娘へのご褒美として、月1回好きなものを外に食べ出かけます。

いつも食事をする時には、私がおいしくたべられるように工夫してくれる娘に感謝しています。

Y・H様(女性・71歳)

宇宙から隕石が降り、私の腎臓の一番大切な所に突き刺さりました。

慢性腎不全による尿毒症・人工透析、これが前病院での初診時のDr. からの言葉でした。3週間の入院、1ヶ月の自宅養療を経て、ケアマネージャーからときわ会で食事療法の指導を受けるよう勧められ、川口先生の診察を受けることになりました。

いろいろな検査の結果、病名もはっきりし、先生の治療と低たんぱく食のお陰でクレアチニンの数値も少しずつ下がり退院しました。

自宅での低たんぱく質30g(0.63g/kg)の食事は、始めはイライラの毎日でした。
でも、考えました。20%しか働いていない私の腎臓、けなげに動いています。だとしたら生きるために私も努力しましょう. . .

70年生きてきて、いかに食に無関心だったかを再認識し、たんぱく調整食品をフルに利用し、食事は楽しんで作り、食べています。
おいしいものは少しだけ食べる。それは幸せなことです。

職業としている茶道・生け花のお弟子さんに支えられ、病院の皆様に助けられ、頑張らずに気楽に、食品成分表と仲良く楽しく暮らしていくつもりです。

食べられる幸せ、働けること、毎日の栄養価計算も楽しみになりました。

計量もいつでもどこでも出来るように、デジタル計りを調理台、食卓、居間の3ヶ所に備えています。
自分の大事な腎臓を守るために・・

S・S様(男性・48歳)

私は腎臓病で、他の病院で定期的に診察を受けていましたが、適切な食事療法の指導がなく5年間でクレアチニン値が1.2から3.8mg/dlまで上がってしまいました。
尿素窒素は58mg/dlでした。
このままでは透析になってしまうと思い、今年2月にときわ会を受診、川口先生指示のもと、1日たんぱく質30g(0.46g/kg)、エネルギー2000kcal(30.7kcal/kg),塩分6g以下の食事をするように栄養士に指導を受けました。

現在、クレアチニン値が3.2から3.4と横ばい、尿素窒素は17〜21の正常値内となり、血液成分もだんだん良くなり、食事療法の大切さを実感しました。

特に主食をでん粉米にすることによって、たんぱく質、リン、カリウムを大幅に減少できるので、肉・魚などの材料を多く摂ることができ、おかずのバリエーションも増えました。
でん粉米は臭いがきつくたべづらいということをよく聞きますが、私はレンジや炊飯器で炊くのではなく、フライパンで炒めて普通のご飯の様に食べています。
フライパンで炒めると不思議とイヤな臭いが出ず美味しく食べられます。

フライパンでのでん粉ご飯の作り方

  • 1.食べる分のでん粉米を4時間以上つけておく。
  • 2.テフロン加工のフライパンを十分温める。
  • 3.水をきったでん粉米をフライパンに入れ、しゃもじで全体を炒め、ねっとりしたら出来上がり。
    (約1分から2分で完成、油は使用しない / ご飯の硬さは水加減で調整)

市販コーンクリームスープ使用の簡単パスタ

  • 1.100gのたんぱく調整スパゲテイーを茹でる
  • 2. 1を茹でる間にほうれん草30gを茹でる
  • 3.フライパンにオリーブオイル5gをひき、豚ひき肉30g、玉ねぎ30gを炒め、お湯150cc、コーンスープの素、麺、ほうれん草を混ぜ合わせこしょうをして出来上がり。

(エネルギー476kcal/たんぱく質7.0g/塩分1.2g)

S・T様(男性・65歳)

27年前に左の腎臓を摘出しました。
当時は食事療法を本格的にはおこなっておりませんでした。
今から3年前にクレアチニン値が1.32、尿素窒素が24.1に上昇し食事療法を開始しました。

半年が経過し、クレアチニン値が1.17、尿素窒素が16.5になっていました。
この時、食事療法って効果があるかもしれないと漠然と思いはじめました。
指示量はエネルギー2000kcal(36kcal/kg)・たんぱく質40g(0.7g/kg)・塩分7gです。

以前は出来上がった料理を計量し計算していたのですが、栄養士から使用する状態(生の状態)で計量することを勧められ、実行しています。
今は妻と二人三脚で、私がカットして計量、妻が調理する人です。

低たんぱくの食材は利用しています。
献立が考え易いですから. . . 1/20ご飯を1日2食使用したり、げんたシリーズの麺類も利用します。
市販のレトルト食材も利用します。
レトルトカレーの中にはたんぱく質含有量が4g以内の製品もあります。
塩分は多いのですが、その後の食事で調整します。

食事記録は毎日つけています。
献立を前日に考えて実施するのではなく、食べたものを計算して、あとどれだけ使用できるか(食べられるか). . .のやり方です。

現役時代は食品会社に勤務していましたから、食材の成分には興味があります。
アイスやドライフーズの製造に携わっていましたので、スーパーに行くと色々な食材の成分値を見る習慣があります。

最近の採血データはクレアチニン値が1.15で尿素窒素が8.4です。

毎月、蓄尿も行っていて、摂取たんぱく質が35g〜32g(0.63g〜0.58g/kg)、塩分が7g〜5g以内です。
蓄尿は面倒との声もありますが、私は食事記録との差が分かり、うれしいです。
食事療法をしていると家族が栄養状態を心配しますが、現在アルブミン値は4.4〜4.2g/dlです。
筋肉量(IN-BODY)からも栄養状態をみてもらっています。
出来る限り食事療法は続けたいと思います。

今回は4名の患者さんのお声をお伝えいたしました。
現在に至るまでの心の葛藤なども垣間見れる貴重な体験談です。
この場をおかりいたしまして、ご寄稿いただいた患者さんに御礼申し上げます。
また、食事療法をされている患者さん方の参考になれば幸いです。

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