文字サイズ:

減塩について減塩について

体内での食塩の働き

食塩は、体内で生命維持に不可欠なナトリウムと塩素から構成されています。
ナトリウムは体内水分量を維持し、神経や筋肉の生体機能の働きに必要です。
塩素は胃酸の成分になります。
細胞内の電解質や浸透圧のバランスを保ちます。

しかし、摂りすぎるといろいろな原因で心拍数の増大や血管の浮腫や収縮をおこし、その結果、高血圧になります。
高血圧は様々な病気の原因となります。
現在の日本人の平均摂取食塩量はだいたい12gといわれていますが、厚生労働省では高血圧や循環器疾患、胃癌等の予防のため18歳以上男性8.0g/日未満、18歳以上女性7.0g/日未満と目標設定しています。
すでに高血圧症状のある場合は「高血圧治療ガイドライン2014」では、1日食塩摂取量6g未満を目標としています。

食品での食塩の働き

日本人の食生活は食塩過多となる嗜好があります。
昔から、食塩を保存料とする様々な塩蔵食品があります。
魚の干物、漬物、梅干、魚卵、佃煮…。冷蔵・冷凍技術が発達し、食塩濃度が薄くても保存が効くようになりました。
しかし、日本人の食生活も多様化しましたが、摂取量は減っておりません。
減塩を意識され、塩や味噌や醤油等の調味料の摂取を控える傾向は強まっているようですが、加工品や外食の利用回数が多く、なかなか減塩には繋がらないようです。

ここいわき市は海に面しており、新鮮な魚介類が多く採れます。
そして、乾燥した風が吹きますので、干物作りに適した土地柄であるといわれています。
冷蔵・冷凍技術の進んだ現在と違い、保存食として干物が多く食べられてきた背景があり、食塩の摂取は多い地区です。
干物は、塩によって水分が抜け旨みが凝縮されます。
また、水分と共に臭みも抜けます。
食塩によりたんぱく質の結合が促され、弾力に富んだ肉質になります。
つまり、お魚がいっそう美味しくなるのです。

食塩は美味しさの決め手

食塩の過剰摂取は体に害を及ぼす…とわかっていますが、上手に減塩しながら、美味しい食事も大切です。
また、減塩食は一般的に『美味しくない』といわれます。

高齢患者さんは味付けが薄いとお食事が進まず食欲低下の原因ともなってしまいます。
病院食を美味しく食べていただくポイントとして、『味付けは一品に集中させる』という工夫をしています。
おかずが三品あるとして、すべて薄味にするのではなく、主菜一品のみを通常に近い味付けにし、他の二品は食塩を控えたメニューにします。
また、外来患者さんへの減塩食指導ポイントは、

  • 1.旬の食材の素材の持ち味を味わいましょう。
  • 2.出汁の美味しさを活かしましょう。
  • 3.温かいものは温かいうちに、冷たいものは冷たいうちに…適温で料理を味わいましょう。
  • 4.全体のバランスが大切。醤油味や塩を使った調理ばかりのおかずにしない。
    酸味…お酢や果汁、油脂の風味を利用した調理を取り入れてみては?
  • 5.私たち日本人は、様々な料理を食べます。
    和食はもちろん洋食、中華、最近では手軽に食材が手に入ることからエスニックも家庭に普及しつつあります。
    さまざまな香辛料や香りの強い野菜を利用してみるのも良いでしょう。
  • 6.減塩醤油や割り醤油の利用。

減塩しているつもりでもできていない方の傾向としては

  • 1.おかず一品の味付けは薄いのですが、おかずの摂取量が多く結果として食塩摂取量が多くなってしまう。
  • 2.薄口醤油の利用。色が薄い (淡い) ことから薄口といわれ、食塩含有量は濃口より多めです。
  • 3.減塩醤油を使っても、普通醤油の倍の量を使ってしまったら同じ量の食塩を摂取してしまいます。
    計量して使いましょう。

医師から食塩制限の指示がある方は意識的に減塩することが大切です。
しかし、食塩制限をされていない方は、ナトリウムを排泄させる働きをもっている水溶性食物繊維が豊富な食品(海藻や野菜や果物)を摂ったり、作りたてを味わってみたり、旬を楽しんでみたり…加工食品や外食が多い方なら、家庭料理の食事の回数を増やしてみる…と、食生活を楽しむことで、減塩食に繋がっていきます。

味の好みは幼少期に培われるものです。
幼い頃の食生活が大切といわれています。
旬の食材の新鮮さや出汁の旨みを活かした、素材を味わう味覚を養う食事が大切です。

おいしく減塩

熱中症対策で塩分を意識して摂られた方もいるのではないでしょうか。
暑さが和らぎ、汗をかく量も減ってきましたら塩分の摂る量も減らしていきましょう。
食塩の過剰摂取はがんやその他生活習慣病を招くもとです。
日本人のここ最近の食塩摂取量は低下傾向で、日本人の食事摂取基準2015年版では1日の食塩摂取目標量が変更となり、18歳以上男性9.0g→8.0gへ、18歳以上女性7.5g→7.0gへ低下しました。

減塩というと、「薄味で味気ない、美味しくない」と考えている方もいると思います。
しかし、単に味付けを薄くするのでは減塩食は続きませんし、食欲低下も招きかねません。
そこで今回は、おいしく減塩できるための工夫を1日の食事を例にご紹介していきます。

朝食

減塩前の献立 塩分
サンマのみりん干し 1.4g
しらすのおろし和え 0.5g
わかめと葱の味噌汁 1.9g
漬物 1.0g
4.8g

減塩前の献立 塩分
焼き魚+だし割醤油 0.8g
酢の物 0.3g
具沢山味噌汁 0.8g
サラダ 0.1g
2.0g

減塩ポイント

  • 1. 新鮮な食材を使いましょう。
    干物や加工食品には塩分が多く含まれているものが多いです。
    鮮度の良い食品や旬のものを使用して、素材の味を楽しみましょう。
  • 2. 手作りのだし割しょう油をお勧めします。
    かつお節や昆布などで濃い目にだしをとり、濃口醤油と1:1、または同量より多めのだしで割って作っておくと便利です。
    しょう油の代わりにお浸しや魚にかけて用いてもよいでしょう。
  • 3. 酢やかんきつ類の酸味を活かしましょう。
    調味料の使用量を少なくするために、レモンやかぼす等のかんきつ類や、酢の酸味を活かすとよいでしょう。
  • 4. 漬物、梅干はなるべく避けましょう。
    「しょっぱい=塩分が多い」ではありません。
    梅干、漬物は少量でも塩分摂取が多くなります。
    また、漬物(塩漬け、ぬか漬け)を甘酢漬けや酢の物に換えても減塩できます。
  • 5. 味噌汁は具沢山なものにしましょう。
    具沢山にすることで汁の量(味噌の量)を減らすことが出来ますし、物足りなさを補うことも出来ます。
    また市販の顆粒だしにも塩分は含まれているので、できるだけ天然だしをとることをお勧めします。
    だしを効かせたすまし汁にかえてもよいでしょう。

昼食

減塩前の献立 塩分
きつねうどん
(汁全量含む)
4.5g
4.5g

減塩前の献立 塩分
皿うどん 2.0g
2.0g

減塩ポイント

  • 6. 麺類のスープは残しましょう。
    麺類自体にも塩分が含まれていますが、スープに多く含まれています。
    種類にもよりますが、スープまで全部飲んで完食すると1日分の塩分を摂ってしまうことになります。
    と言っても、スープを飲んでいなくても麺に絡んできますし、おいしいスープはついつい飲みたくなってしまいますね。
    そこで今回は、汁気の少ない麺類の食べ方に工夫しました。
  • 7. 香味野菜をふんだんに使用しましょう。
    大葉、みょうが、ねぎ等、香りの高い野菜は薄味を補うだけでなく、汁気の少なさもカバーしてくれます。
  • 8. 市販食品、加工食品の使いすぎは避けましょう。
    市販食品や加工食品は塩分が多い傾向にあります。
    例えば、かまぼこなどの練り製品、ハム・ソーセージなどの製品、佃煮などです。
    市販食品の塩分量を確認する習慣や、どんな食品に塩分が多く含まれているか、理解することも大切です。

夕食

減塩前の献立 塩分
鶏肉の照り焼き 0.8g
じゃがいもと野菜の煮物 1.7g
きんぴらごぼう 0.4g
味噌汁 1.7g
4.6g

減塩前の献立 塩分
チキンカツ、ソース 0.7g
じゃがいものカレーソテー 0.3g
ごぼうサラダ 0.4g
すまし汁 0.6g
2.0g

減塩ポイント

  • 9. しょう油料理を何品も重ねないようにしましょう。
    調味料の中でもしょう油は特に塩分含有量が多い分類です。
    食材は同じでも調理法、調味料を工夫することで減塩できます。具体的には…
  • 10. 油のコク、香ばしさを利用しましょう
    炒め物や揚げ物は油のコクがあり、塩分が少なくても美味しく食べられます。
    味付けも中までしみ込ませる煮込み料理より、表面に味付けする調理法のほうが塩分を減らせます。
    また、ソースやしょう油などの調味料は直接料理にかけるのではなく、小皿にとってつけると使用量が少なくてすみます。
  • 11. 香辛料を活用しましょう
    こしょう・一味・カレー粉などの香辛料を使うと、味にアクセントや風味がつくので減塩しやすくなります。
    ※カレールーは塩分を含みます。

以上11個の減塩ポイントをご紹介いたしましたが、市販の減塩しょう油を利用しても手軽に減塩できます。
しかし減塩しょう油を過信し、たくさん使いすぎには注意しましょう。
また、薄口しょう油を減塩しょう油だと誤解している方もいますが、薄口しょう油は色味が薄いというだけで、食塩量は濃口と比較すると多く含まれているので、ご注意下さい。

しょう油の種類 食塩量
(大さじ1)
濃口しょう油 2.6g
薄口しょう油 2.9g
減塩しょう油
(キッコーマン)
1.2g

看護師サイト