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透析装置の全自動化へ



財団法人ときわ会常磐病院では、2011年7月の透析センターのグランドオープンにあたり、JMS社製全自動透析装置GC-110Nを100台新規導入しました。今回、この全自動透析装置のはじめとする常磐病院透析センターに導入された、最新の透析機器についてご紹介したいと思います。

全自動透析装置の特徴(JMS社製GC-110N)

(1) 逆濾過透析液による自動プライミング

<従来のプライミング>

ダイアライザー・血液回路・生理食塩水をセットし、生理食塩水で手動プライミングを実施していきます。1L流したのちにカプラを接続してダイアライザー内を透析液で満たします。

<全自動プライミング>

ダイアライザー・血液回路をセットし、カプラを接続する。あとはボタンを押すだけで逆濾過透析液4Lを使用して自動でプライミングします。

(*)逆濾過透析液とは、ダイアライザーの膜の外側から内側へ(透析装置側から回路側へ)流す透析液のことです。

逆濾過透析液は、生理食塩水よりも大量に液を流すため、ダイアライザー内の不純物を十分洗浄することが可能です。また、回路をセットすれば自動でプライミングしてくれるので、1台あたりのプライミング時間が少なくてすみます。

(2) 自動脱血

<従来の治療開始時>

脱血側と返血側の針と回路を接続後、手動でポンプを回転させて回路内に血液が十分に満たったことを確認して手動で治療を開始させます。

<自動脱血>

脱血側と返血側の針と回路を接続後、ボタンを押すだけで脱血側・返血側同時に脱血していき、回路内の透析液を抜いていきます。一定量脱血すると自動で治療が開始します。

自動脱血は余分な回路内の充填液を体に入れることなく治療できます。また、針先と回路を接続してから透析装置側へと脱血するため、空気が体に混入する危険性もなくなり、ボタン1つで安全に治療が開始できます。

(3) 急変時の急速補液

<従来の急変時補液>
血液回路の生理食塩水注入ラインより補液をします。

<急速補液>

ボタンを押すと、逆濾過透析液を体内に補液します。

従来の補液には一連の動作が必要でしたが、急速補液はボタンを押すだけで補液することができ、急変時の迅速な対応が可能となります。

(4) 自動返血

<従来の返血>
透析終了(目標除水量の達成・透析時間の経過)後、スタッフが脱血側を抜針して、生理食塩水で血液を洗い流して返血していきます。返血完了後、返血側も抜針して透析終了になります。

<自動返血>
透析終了になると、透析装置から回路内へ逆濾過透析液が自動で流れだし、脱血側と返血側の血液を洗い流し返血が完了します。最後にスタッフが抜針して透析終了になります。

自動返血を使用すると一連の動作がなくなり、患者さんをお待たせする時間を短くすることができます。

(5) 血液回路の簡略化

全自動透析装置の回路は動脈側のチャンバーがなるので、従来の回路より容量が小さくなります。これにより、透析中に体から回路へ流れる血液量が減少するので、体への負担が軽減できます。

(6) 透析操作の標準化・安全性の向上

全自動透析装置を導入することで、スタッフが行う手技や操作を標準化し、操作回数を減少させることによって、医療事故・接触感染・ヒューマンエラーなどのさまざまな危険性を軽減できます。また、安全な治療を効率的に行うことができるようになり、従来の透析装置より十分に患者さんのケア時間を確保することが可能になります。

無酢酸透析液(カーボスター)

常磐病院透析センターでは、全装置、透析液を従来のものから無酢酸透析液に変更し、透析を実施しています。本剤には、心機能抑制作用や末梢血管拡張の作用があるといわれている酢酸が入っておらず、透析中の血圧低下の軽減につながります。特に酢酸不耐症の患者さんには、安定した透析の実施にとても有効だといわれています。

オンラインHDF

常磐病院透析センターではオンラインHDFも実施しており、現在10台の透析装置で実施可能となっております。オンラインHDFとは、清浄化された透析液を置換液として使用した血液透析濾過法(HDF)で、従来のHDFより大量の透析液で置換することが可能となっています。HDFは、通常の血液透析では除去困難な物質を除去することが可能で、特に透析アミロイドーシスの原因と考えられているβ2マイクログロブリン等を除去することが可能となり、骨・関節痛、、レストレスレッグ症候群、イライラ感、不眠、食欲不振、腎性貧血などの透析に伴う不快な症状の改善が期待されています。

透析液の清浄化

逆濾過透析液は、透析液が直接体内に入るため、清浄化された透析液が求められます。 常磐病院透析センターでは清浄化された透析液を確保されているか確認のため、生菌・エンドトキシン検査を毎月実施しています。当院は超純水透析液の水質基準を達成しております。

  ET 細菌数
透析用水(RO水) 0.050EU/ml未満 100CFU/ml未満
標準透析液 0.050EU/ml未満 100CFU/ml未満
超純粋透析液 0.001EU/ml未満 0.1CFU/ml未満

(*)日本透析医学会『透析液水質基準と血液浄化器性能評価基準2008』より抜粋

透析液清浄化の対策

透析液清浄化のために、以下の対策を行っています。

  • ・過酢酸洗浄を毎日、次亜塩素酸消毒週3回実施
  • ・透析液供給装置および、透析装置各台にエンドトキシン捕捉フィルター(ETRF)の設置

常磐病院透析センターでは、全自動透析装置、無酢酸透析液、オンラインHDFの導入により、透析患者さんの合併症のできる限りの低下を目指しています。透析患者さんの生活の質(QOL)を左右するのは、合併症の有無といわれております。透析患者さんにより安楽な生活を送っていただくために、これからもときわ会グループでは、様々な最新機器を通して合併症の軽減を図り、みなさまに最善の透析医療を提供していきたいと思っています。今後ともよろしくお願いいたします。

常磐病院 臨床工学課 佐藤克彦