常磐病院

常磐病院は、地方都市の中規模の私立病院でありながら、診療業務だけでなく「学術研究」も積極的に実施している医療機関です。医師・看護師等、業種を問わず、若手のコメディカル職員も積極的に研究および論文製作を支援しています。

常磐病院は、看護師やコメディカルスタッフも診療業務をおこないながら、学術論文の製作や臨床研究をおこなうことができます

「常磐病院 臨床研修センター」センター長・福島県立医科大学特任教授であり、乳腺外科の尾崎医師がリーダーを務める「常磐研究グループ」を中心に、若手職員の学術研究を支援しています。
現在研究を進めている若手スタッフは、ほぼ全員が「論文の書き方が分からない。英語の論文なんてとても書けそうにない」という職員ばかりでした。ですが、尾崎医師の指導や、東京大学・東北大学・福島県立医科大学などの協力を得ながら論文製作を進め、日本語だけでなく英語での論文も作成しています。日本国内はもとより、海外での論文発表も視野に入れ、各スタッフ日々研鑽を積んでいます。

常磐病院の職員であれば「常磐研究グループ」への参加条件は特にありません。臨床はもちろん「学術研究・論文発表についても興味がある」という方は、ぜひ下記までご連絡・ご応募ください。

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スタッフNo.001
リハビリテーション課 主任 笠井唯史

研究タイトル
日本の市民病院におけるロボット支援腹腔鏡下根治的前立腺切除術後の術後尿失禁の期間と影響因子:単一施設のレトロスペクティブ・コホート研究

掲載学術誌/ International Journal of Environmental Research and Public health
研究要約/ロボット手術で前立腺全摘出をおこなった患者さんの術後の尿失禁が回復するまで期間や、リハビリ訓練の内容に関する研究
https://www.mdpi.com/1660-4601/20/5/4085

学術研究報告書
リハビリテーション課 笠井唯史 主任

現在のテーマで学術研究をおこなうこととなったきっかけを教えてください

常磐病院へ入職後、2016年より排尿ケアチームの一員として活動を開始し、前立腺がん患者さんへ術後の尿失禁に対する骨盤底筋エクササイズを指導させて頂くようになりました。この活動を通して、前立腺摘出後に尿失禁で悩んでいる男性が割合多くいることがわかりました。女性の尿失禁はマイナートラブルの一つとして比較的知られてはいますが、男性の尿失禁についてはあまり表面化しておらず、国内のリハビリテーションではあまり研究が進んでないのが現状です。常磐病院では泌尿器科手術件数が多く、この研究をすることで患者さんの治療にもつなげられると考え研究のテーマとしました。

学術研究をおこなう上で苦労した事や得たものを教えてください

今まで臨床でのリハビリテーションのみ行ってきた私にとって、論文作成を念頭においた学術研究自体が初めてであり、わからないことだらけでした。研究テーマの検討から論文作成に至るまでのいろはを乳腺外科医の尾崎先生に助言を頂きながら進めていきました。私の研究および論文作成は、まず過去の論文を読むことから始まりました。今まで学術的なことが苦手だった私にとって論文を読み、理解することはとても大変でした。しかし、少しずつ読み進めることで、調べたい事柄のトピックがつかめてくることがわかりました。現在では、海外の論文を検索して読めるようになってきました。また、この活動を通して新たな発見があり、国際的な治療ガイドラインを理解する重要性を知ることができました。

リハビリテーション課 笠井唯史 主任

この研究結果をどう患者さんにフィードバックしていくのでしょうか?

これまでも、前立腺全摘徐術後の尿失禁に対しては国際的に研究が進められており、国内でも大学病院等では報告がありました。しかしながら、市中病院ではあまり報告が無いのが現状です。今回の研究結果から、当院での術後の尿失禁に対する要因や尿失禁が改善してくるまでの期間がおおよそわかってきました。これらを術前から患者さんへ説明することで、比較的早い段階から尿失禁に対しての理解を得ることができ、対処できるようになります。また、国際的なガイドラインをもとに患者さんへ質の高い骨盤底筋エクササイズを提供できるようになります。

リハビリテーション課 笠井唯史 主任

臨床をおこないながら学術研究を進めたいと考えている方に向けて一言

働きながら、自分の職場で学術的な活動も同時に進められるということが、この活動の一番のメリットかと思います。なかには研究に興味はあるが何から始めていいのか分からない方も臨床現場には多くいるかと思います。私の場合は、乳腺外科医の尾崎先生をはじめ、臨床で活躍する多くの先生方にご指導頂き、医学生の方のご協力のもと、現在の研究を進める事ができております。これから学術研究を始めたいと考えている方にとって、常磐病院はとても恵まれた環境です。ぜひ一緒に働きながら、研究を通して患者さんのために知識を深めスキルアップをしていきましょう。

スタッフNo.002
リハビリテーション課 小林奈緒美

研究タイトル
日本における乳がん患者のリンパ浮腫調査

発表予定の学術誌/未定
研究要約/日本における乳がん患者のリンパ浮腫調査。乳がんの治療後にリンパ浮腫を発症した女性において、どのようなことで悩んでいるか明らかにし、必要なサポートを検討することを目的とし質的研究を行った。

リハビリテーション課 小林奈緒美

現在のテーマで学術研究をおこなうこととなったきっかけを教えてください

リンパ浮腫を発症した患者さんに関わり、それぞれ様々な悩みを抱えていることを知りました。乳腺外科が開設となり、乳がん患者さんとの関りが増え、患者さんがどんなことで悩んでいるのか、リンパ浮腫の予防のためにはどんなことが必要なのかと疑問に思ったことがきっかけでした。また、患者さんの悩みを知ることで、今後の臨床において、患者さんへ少しでも還元できればと尾崎先生に相談しこのテーマで研究することを決めました。

学術研究をおこなう上で苦労した事や得たものを教えてください

研究や論文の作成は今まで経験がなく、全てが初めての経験でした。常磐病院では尾崎先生をはじめ様々な先生方が優しくサポートしてくださり、苦手だった研究も進めることができました。臨床を行いながら研究を行うことは少々苦労しますが、その分、自分の興味ある分野について深めることができたと感じました。

リハビリテーション課 小林奈緒美

この研究結果をどう患者さんにフィードバックしていくのでしょうか?

研究を通して、リンパ浮腫で患者さんがどんなことで悩んでいるのか、予防のために何が必要なのかということについても知ることができました。リンパ浮腫を予防できるよう、患者さんに対しパンフレットを使用し運動方法など分かりやすく説明できるようにしていきたいと思います。また、リンパ浮腫を発症した患者さんに対しては、患者さんにあったサポートができるようにしていきたいです。

リハビリテーション課 小林奈緒美

臨床をおこないながら学術研究を進めたいと考えている方に向けて一言

臨床を行いながら研究を行うことは少々大変ですが、尾崎先生をはじめ様々な先生方やスタッフのサポートを受けながら進めることができます。未経験者でも、自分の興味ある分野について深めることができ、患者さんにフィードバックできる環境です。異なる分野を研究しているスタッフとも楽しく研究できると思います。

スタッフNo.003
リハビリテーション課 高松克守

研究タイトル
Physical and psychological effects of long-term supervised self-exercise during dialysis

発表予定の学術誌/Therapeutic Apheresis and Dialysis
研究要約/透析患者に対する血液透析中の運動療法を導入し、身体機能面や精神機能面に関連する因子を評価し、これらの機能維持および改善効果があるのかを検討した介入研究。

リハビリテーション課 高松克守

現在のテーマで学術研究をおこなうこととなったきっかけを教えてください

当院では腎臓内科の患者さんへリハビリを提供する機会が多くありました。しかしながら、大学では腎臓病に対するリハビリや透析については詳しく学ぶことがありませんでした。入職後、慢性腎臓病や透析患者さんのリハビリを経験してサルコペニアやフレイル、合併症を多く有することを知ったこと、また、当院では透析中に運動を行うことを導入し始めたこともあり、これらに対する知識が足りないと感じたことが初めのきっかけでした。それから、腎臓病や透析についての論文や参考書を調べたり、関連学会への参加・発表、腎臓リハビリテーション指導士資格の取得を行いながら、臨床でCQやRQを模索し、腎臓病患者さんに対する研究を行ってきました。

学術研究をおこなう上で苦労した事や得たものを教えてください

一番苦労したことは、臨床で得られたデータの統計解析や結果の解釈でした。大学の卒業研究でも統計解析はおこないましたが、様々な解析方法があり、解析の選択から分析結果の解釈において苦労しました。これらを学ぶために臨床研究を継続しながら研修等に参加したり、先生方からアドバイスを頂いていました。とにかく臨床研究を継続することと、分からないことは有耶無耶にしないことを意識して進めてきました。その甲斐があって、クリニカル&リサーチクエスチョンを考え、クリニカルリーズニングを以前よりも臨床中で応用できるようになったと感じています。結果、臨床研究の継続によってリハビリの臨床の質が上がることに繋がったと感じています。

リハビリテーション課 高松克守

この研究結果をどう患者さんにフィードバックしていくのでしょうか?

私の主な研究内容は、腎臓病や透析患者さんに対してリハビリテーションの効果を明らかにして、患者さんへ運動の大切さを伝えること、健康へ意識していただくことです。背景に、福島県では糖尿病や心不全、アンバランスな食生活、運動不足の方が多いとされています。併せて健康志向も低いと考えられるため、運動や食事の大切さをリハビリの効果と合わせてヘルスリテラシーの向上につながるように、今後も研究とフィードバックを続けていきたいと思います。

臨床をおこないながら学術研究を進めたいと考えている方に向けて一言

臨床研究は決してハードルは高くなく、研究を進めるプロセスには沢山の学びや楽しさがあります。興味や関心が少しでもあればぜひ研究チームに気軽にお声がけ下さい。私は入職して1年目から臨床研究を続け、現在は大学院(福島県立医科大学)に通いながら、家庭を優先しつつ仕事や学術および研究へ時間を割くことは可能です。しかしながら、1人で継続することはできなかったと思います。家族やリハビリ課の同僚、ご指導頂ける先生方のお力添えをいただいたおかげでここまで来れたと強く実感しています。1歩踏み出すにはとても勇気のいることですが、その1歩を踏み出して新たなチャレンジをしてみましょう!

スタッフNo.004
泌尿器科 副部長 小内友紀子

研究タイトル
過活動膀胱治療満足度と医療者・患者性別の組み合わせの関係の検討:質問紙調査

発表予定の学術誌/BJUI Compass
研究要約/過活動膀胱で内服治療をしている患者さんの満足度と医師の性別の違いについての研究

泌尿器科 副部長 小内友紀子

現在のテーマで学術研究をおこなうこととなったきっかけを教えてください

泌尿器科の外来で過活動膀胱の患者さんにお薬を処方していますが、患者さんは実際にお薬を飲んで満足しているのかどうか。また、いわきには女性の泌尿器科医で常勤の医師は私しか知る限りおりません。女性の患者さんは女性医師が診療すると治療の満足度が高いのかを調べたいと思いました。

学術研究をおこなう上で苦労した事や得たものを教えてください

きちんと倫理委員会に研究計画を出すところから、実際のアンケート作り、作ったアンケートの配布や回収、データ入力、そのデータの解析、論文化の作業など思っていた以上にいろいろと工程がありました。何をどうしてよいかわからず、尾崎先生に指導していただきながら論文の形にまとめることができ、本当に感謝しております。たくさんの関係する論文に目を通すことができて、別のテーマのことなどにも触れる機会を得ました。

泌尿器科 副部長 小内友紀子

この研究結果をどう患者さんにフィードバックしていくのでしょうか?

自分がいわきで働いている意味をさらに重く感じます。女性のみならず男性の患者さんにも専門的な泌尿器科の診療をお届けしたいと思っています。また、過活動膀胱の内服治療で満足していない患者さんに、次の治療を適切に提供できるようにしたいです。

泌尿器科 副部長 小内友紀子

臨床をおこないながら学術研究を進めたいと考えている方に向けて一言

論文を書くには大学院に入ったり、留学しないとだめという先入観がありましたが、臨床の仕事を重ねながら、臨床研究を少しずつすすめることで論文の形にすることができました。女性の医療者は仕事で忙しいこと以外にも、家事や育児などでまとまった時間をとることが難しい方も多くおられると思います。学会や発表はできるけど、論文はハードルが高いとお感じの方々でも、少しずつ進めることで自分の研究を形にすることができます。自分も論文を書いてみたいという方、一緒に頑張りませんか?。

発表論文

①タイトル/Interruption of breast cancer care and importance of inter-hospital cooperation during the COVID-19 pandemic: A case report of advanced breast cancer in Fukushima, Japan

・著者/Ozaki A, Kaneda Y, Senoo Y, Wada M, Kurokawa T, Sawano T, Tsubokura M, Tanimoto T, Kanemoto Y, Ejiri T, Shimmura H, Kanzaki N.

・引用/Clin Case Rep. 2022 Aug 3;10(8):e6151. doi: 10.1002/ccr3.6151. eCollection 2022 Aug.

②タイトル/Patient Factors and Pathology and Ultrasonography Findings Associated With Appendectomy

・著者/Kaname T, Ozaki A, Tanimoto T.

・引用/JAMA Surg. 2022 May 25. doi: 10.1001/jamasurg.2022.1559. Online ahead of print.

③タイトル/Detection rate and variables associated with incidental prostate cancer by holmium laser enucleation of the prostate

・著者/Banno T, Nakamura K, Kaneda Y, Ozaki A, Kouchi Y, Ohira T, Shimmura H.

・引用/Int J Urol. 2022 Aug;29(8):860-865. doi: 10.1111/iju.14917. Epub 2022 May 18.

学術研究報告書

④タイトル/Possible association of Typhoon Hagibis and the COVID-19 pandemic on patient delay in breast cancer patients: A case report

・著者/Kaneda Y, Ozaki A, Wada M, Kurokawa T, Sawano T, Tsubokura M, Tanimoto T, Kanemoto Y, Ejiri T, Kanzaki N.

・引用/Clin Case Rep. 2022 Mar 22;10(3):e05621. doi: 10.1002/ccr3.5621. eCollection 2022 Mar.

⑤タイトル/Challenges and future?directions in breast cancer care in Fukushima prefecture in Japan: correspondence to "A survey on the current status of clinical resources for diagnosis and treatment of breast cancer in rural hospitals of the Tohoku region in Japan"

・著者/Ozaki A, Tachibana K, Ohtake T.

・引用/Breast Cancer. 2021 Sep;28(5):1163-1164. doi: 10.1007/s12282-021-01254-9. Epub 2021 Apr 20.

⑥タイトル/A call for individualized evacuation strategies for floods: A case report of secondary surgical site infection in a postsurgery breast cancer patient in Fukushima, Japan, following Typhoon Hagibis in 2019

・著者/Ozaki A, Kanemoto Y, Wada M, Kurokawa T, Kawamoto A, Sawano T, Bhandari D, Tsubokura M, Tanimoto T, Ejiri T, Kanzaki N.

・引用/Clin Case Rep. 2021 Jan 15;9(3):1212-1214. doi: 10.1002/ccr3.3727. eCollection 2021 Mar.

⑦タイトル/Nail Wound and Cellulitis Following Typhoon Hagibis in Fukushima, Japan

・著者/Ozaki A, Kanemoto Y, Morita T, Nishikawa Y, Sawano T, Fujioka S, Shimada Y, Higuchi A, Tsubokura M, Kanzaki N.

・引用/Disaster Med Public Health Prep. 2021 Oct;15(5):540-542. doi: 10.1017/dmp.2020.78. Epub 2020 Jun 3.