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常盤傑ご挨拶ときわ会グループ

一所懸命

ご挨拶

「地域の皆様と共に生きる」という基軸のもと、ときわ会グループはまさに皆様との力強い歩みを頂戴し、現在まで前進を続けて参りました。医療から始まった地域の輪は、今や教育・保育・健康分野にも裾野が広がり、現在は国際協力分野の新天地にも及んでおります。グローバルに流動化し続ける現代社会は、「諸行無常の響きあり」と言うがごとく潮流の変化が激しく、地域社会が求めるものも大きな変容を続けております。そうした中で、私たちときわ会が担うべき責務と使命もまた、適切な見極めと果敢な調整を続ける必要があるでしょう。

歴史を振りかえってみますと、ときわ会の礎を築いた仙台出身の父・常盤峻士は、ここ常盤病院からすぐ近く、福島労災病院の泌尿器科に勤務をしておりました。同科には「ゴッドハンド」とも評されるような伝説的な部長先生がおられ、父はその先生に従事していたのです。その後、昭和57年(1982年)、35歳の父は独立して「いわき泌尿器科」の開院に至ります。19名のスタッフ、入院病床19床、透析ベッド30床、そして事業所内保育施設(託児室)、これが病院の総てでした。ここで働く人たちも、ここに来る方たちも、共に幸せになれる病院へ。後にゆしまや保育園の前身となる託児室が設けられたのも、そのような想いがあったからです。そうして若き父は人事を尽くし、地域社会への貢献を行いました。

その頃、私は幼稚園の年長ぐらいの時分。私は高校卒業までいわきで育ちますが、とにかく父の印象は「忙しい人」といった印象でした。父の行動範囲は基本的に家とクリニックの往復で、家に戻るのはご飯の時間だけといった生活だったのです。私はそのような父の背中を見ながら、ゆくゆくは自分もお手伝いをしたいと感じながら育ちました。私は磐城高校卒業後に岩手医科大学へ進学し、平成18年(2006年)の岩手医科大学付属病院初期研修を経て、岩手医科大学付属病院泌尿器科学講座所属の医師として勤務を開始。そして平成22年(2010年)に大学院研究を修了して大学病院街の病院へ勤務となります。このような道のりで、父と同じ医療の道を進む事となりました。

翌2011年3月11日は、私たちが決して忘れる事のない、東日本大震災が起こりました。沿岸部に属していながらも山側に位置していた病院自体の打撃は比較的浅いものでしたが、言う間でもなく、私たち市民は大きな苦難に立ち向かわねばなりませんでした。職員・地域・行政の皆様の献身的な支えなくして、当時の状況を乗り切る事は不可能であったでしょう。皆、誰から指示を受けた訳でもなく自らの役目を果たし、手を取り合いながら地域医療の柱をしっかりと支え続けたのです。

受付の女性スタッフの方が、夜中まで毛布にくるまりながら、「もしかしたら、今、患者さんが歩いてくるかわからないから」と言って、薄暗い病院の入り口を交代制で守っている姿に、私も本当に活力を貰いました。とにかく目の前の患者様を助ける事に尽力しました。この当時の壮絶な経験が、私にひとつの理念を投げかけてくれたように感じます。「一所懸命」――命を賭けて自らの使命をまっとうし、他者や地域に尽くすという気概です。

この「一所懸命」という言葉は、現代でも「一生懸命」という言葉に変容し、日常的に私たちが用いているものとなります。その歴史は厚く、由来は鎌倉時代まで遡ると言います。「武士が先祖伝来の所領を命がけで守り抜く」という力強い覚悟が込められていたそうです。もともと、いわきは人々が共に力を尽くし合い、懸命に未来を切り拓いてきた歴史を有しますから、ある意味でこちらは「いわきの魂」とも言うべき概念なのかもしれません。

震災に関連する繁忙な日々を経て、私は平成24年(2012年)、故郷・いわきの地を再び踏む事となりました。この時、父が開院して間もなく立ち上げた託児所は「ゆしまや保育園」へと成長しておりました。時期を前後して、平成21年(2009年)には金谷幼稚園がときわ会に移譲され「かなや幼稚園」として誕生をしております。こちらは懐かしい、私の出身幼稚園でもあります。これらの充実した福祉環境の広がりは「従業員が安心して働ける環境を作りたい」という父の想いが実現したものであり、医療を中心として人の輪と絆が繋がりゆく在り方を示すものです。「働いている方たちが幸せでないと患者さんにも余裕を持って接することができない。その為には、まず自分たちの幸せの環境づくりを整えねばならない。」この父の理念は、紛れもなく私の人生指針の糧にもなっております。

病院も地域社会も、私たちは広義における家族だと思います。自分の周りにいる人たちも、患者様も、家族として共に力を分かち合い、幸せの世界を紡いでいく。その歩みを決して止めず、ひいては医療や日本全体の活力と発展へ結び付けていく。そうした豊かな未来を目指し、私たちは地域の皆様の為に、最善・最良の医療、介護サービスをお届けする所存です。今後とも、私たちときわ会グループをご愛顧賜りますよう、何卒お願い申し上げます。

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