切らずに治す前立腺がん HIFU 治療
限局性前立腺癌に対する高密度焦点式超音波 (HIFU) 治療
がんが前立腺に限局している「限局性前立腺がん」では、これまでは前立腺全摘出術や放射線治療、ホルモン療法などが行われてきましたが、より侵襲の少ない治療法としてHIFU治療が近年一部の施設で行われ始め、その優れた治療成績が報告されています。
当グループでも、2006年6月に限局性前立腺がんの治療としてHIFU治療を福島県で初、東北で2番目に導入し、これまでに250人以上の患者様に治療をおこない、重大な合併症も認めず多くの前立腺がんをHIFU療法で治療しています。
前立腺と前立腺がん
前立腺がんとは、前立腺といって男性にしかない生殖器にできるがんのことで、最近の生活スタイルの欧米化に伴い、急速に増加しているがんのひとつです。
前立腺は膀胱と陰茎の間に位置し、その中を尿道が貫いています。前立腺の働きは分かっていないことが多いのですが、精液の一部として前立腺液を分泌しています。
早期の前立腺がんにはほとんど症状がないため、その診断には血液検査で、PSA(前立腺特異抗原)を測定することが有用です。PSAの値が4ng/ml以上の場合前立腺がんを疑い、MRIや超音波検査などの画像検査とともに前立腺針生検を行い、前立腺がんの有無を診断します。
限局性前立腺がんの治療 - HIFU治療以外の限局性前立腺がん治療の特色
限局性前立腺がんとは、がんが前立腺の内部にとどまっていてリンパ節や骨などに転移していない状態のがんのことです。HIFU治療以外の限局性前立腺がんの治療の特色を以下に侵襲(体の負担)の少ない順に示します。
(1) 無治療
前立腺がんは他のがんと比べて進行がゆっくりなものが多く、悪性度が低い限局性前立腺がんが見つかった場合、ときに無治療で経過を見る場合があります。
(2) ホルモン療法
多くの前立腺がんは、男性ホルモンの存在によって増殖します。そのため、抗男性ホルモン薬で男性ホルモンの分泌や働きを抑えることによって、前立腺がんの増殖を抑制することができます。ただし、長期のホルモン療法を続けていると、ホルモン療法では抑制されない前立腺がん(ホルモン不応性前立腺がん)が発生することも知られています。副作用として、男性ホルモンの抑制による勃起障害、性欲減退、女性化乳房などがあります。
(3) 放射線外照射
放射線を前立腺に照射することにより前立腺がんを治療する方法です。
特に入院は必要なく外来通院で約1ヵ月半の治療になります。外来通院のみで治療が可能ですので、合併症のある方や高齢者の方に適しています。副作用として直腸潰瘍、皮膚潰瘍、勃起障害などがあります。
(4) 小線源療法
小線源療法とは、放射線を発生する小線源を前立腺の内部に50〜100本埋め込むことにより、前立腺がんを治療する方法です。小線源を埋め込むために 3〜4日間の入院が必要です。副作用として、放射線外照射よりは頻度は少ないものの、放射線が照射されるため、同様に直腸潰瘍、皮膚潰瘍、勃起障害などが あります。
(5) 手術療法
限局性前立腺がんの根治的治療として、これまで最もスタンダードとされてきた方法が前立腺全摘術です。これは全身麻酔下に下腹部を切開し前立腺を摘出し、その後膀胱と尿道を吻合する方法です。
前立腺の周囲には太い静脈があるため、術中大量出血の可能性があり、前立腺の両脇を勃起神経が走行しているため、手術後に勃起障害が発生することが知られ ています。また前立腺の先端部には尿道括約筋があり、これが傷つくことにより術後尿失禁が発生することがあります。しかしながら、最近の前立腺全摘術の技 術向上により、これらの合併症は以前に比べて非常に少なくなっています。手術時間は1〜3時間かかり、入院は2週間前後必要です。近年、腹腔鏡で前立腺を摘出する手術が行われ、傷が小さくめ痛みの少ない方法のため入院期間が短くなり、前立腺部を拡大し手術するので出血や勃起障害などの合併症を減らすことができます。さらにロボットを用いた前立腺全摘術も行われるようになっています。腹腔鏡手術やロボット手術による前立腺癌治療は、ときわ会グループでは東京女子医大泌尿器科前立腺癌治療センターと相互協力し、現在行なっています。
限局性前立腺癌に対する高密度焦点式超音波 (HIFU) 治療
HIFU治療の原理
HIFU(High Intensity Focused Ultrasound、高密度焦点式超音波)治療とは、強力な超音波を一か所に集中させて、焦点領域だけを60度から90度に加熱し、組織を熱凝固、壊死させることによってがんを治療する方法です。
実際は肛門から直腸にプローブを挿入してここから前立腺に焦点を絞って超音波をあてます。この焦点をコンピュータ制御により少しずつ前立腺内部を移動させていきます。治療時間は2〜3時間、下半身麻酔(腰椎麻酔)で行います。
HIFU治療の特色
長所
- 1.体にメスを入れないので、治療後の痛みがない。
- 2.出血がないため、手術療法に比較し安全性が高い。
- 3.入院が短期間である。
- 4.手術療法や放射線療法と比較し同等の臨床成績
- 5.HIFU後に放射線療法あるいは根治手術可能
- 6.繰り返し治療可能
合併症
- 1.尿道直腸瘻 約1%
- 2.尿道狭窄 約20%
- 3.勃起障害 約30%
HIFU治療の実際
入院は原則4日間です。HIFU治療の予定日の朝に入院していただき、治療前に体の状態をチェックした後に手術室に入室となります。
手術室に入室し、まず腰椎麻酔をかけます。その後必要に応じ膀胱瘻(腹壁から膀胱に直接カテーテルの挿入)留置します。その後直腸からプローベを挿入し、コンピュータで前立腺の治療範囲を決定し、治療開始となります。
治療時間は 、前立腺の大きさによって変わりますがだいたい2〜3時間です。
治療後は、病室に戻り治療当日はベッド上で安静にしていただきます。
治療後翌日より歩行していただき、食事も始まります。3日間の経過観察の後、退院となります。
HIFU治療の治療成績
HIFUの治療成績は、前立腺全摘術や放射線外照射、小線源療法と比較し遜色ない治療成績であると報告されています。しかしその治療成績を左右するのは、手術前の前立腺がんの状態が、限局性(がんが前立腺の内部にとどまっていて、リンパ節や骨などに転移していない状態)かどうかに大きく左右されます。そのため手術前に前立腺がんの状態をMRI、CT等で検査し正確に把握することが重要になります。
<HIFUに関するお問い合わせ>
HIFU治療に関する診察は随時受け付けています。
担当医師:渡辺良太、新村浩明
お問い合わせ:
〒972-8322
福島県いわき市常磐上湯長谷町上ノ台57番地
財団法人ときわ会 常磐病院
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