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乳幼児用の内部被ばく検査機器「ベビースキャン」いわき泌尿器科に導入

乳幼児用の内部被ばく検査機器「ベビースキャン」いわき泌尿器科に導入

当院では、平成24年4月から稼働している内部被ばく検査器・ホールボディカウンターに加え、26年5月から、これまで実施できなかった乳幼児の内部被ばくを調べる検査機器「ベビースキャン」を導入する予定でおります。
現在のホールーボディカウンターは大人用であり、幼児測定には不向きです(図①)。幼児が内部被ばくをしていて保護者がしていない状況は考えられませんが、しかし、「この子を測ってください」という多くの声寄せられるのも実情です。また成人の被ばく0.01mSvは、1歳幼児~5歳児では0.1mSvに値し、大人用のWBC検査器において、幼児を同じ検出限界(250~300Bq)で測定するのは無意味である他、立位による検査ということもあり、身長が低い乳児を調べると結果に誤差が出てしまい正確な検査ができませんでした。
この度、大人用よりも検出限界値の低いベビースキャンで測定することが今後の浜通りにおいて必要になるという思いから、導入する運びとなりました。

乳幼児用の内部被ばく検査機器「ベビースキャン」いわき泌尿器科に導入

無料で実施

ベビースキャンは、乳児から身長130センチまでのお子さんを対象としております。これによりホールボディカウンターと併せ、全年齢の方が内部被ばく検査を受診できることになります。また、「ときわ会」では、ホールボディカウンター同様、ベビースキャンも地域貢献の一環という考えのもと、無料にて検査を行います。
ホールボディカウンターおよびベビースキャンによる検査は、検査衣を身に着けての受診となります。前者は機器の中に4分間寝式、後者は2分間の立位式になります。
ベビースキャンの検出限界値は従来のホールボディカウンターの6分の1程度となる全身50ベクレル未満となり、かなり低い検出限界値になります。

ときわ会における内部被ばく検査の現状

当院では園児の割合が、25年12月末の段階で総数8360人の検査のうち46.8%(3848人)と、高い割合を占めています。園児には身長が足りない分、検査台を検出機内に設けその上に上がってもらい検査を行っていました。ベビースキャン導入後はそういった煩わしさはなくなり、測定値にも信頼性が今以上に出てきます。24年4月導入から25年12月末までのホールボディカウンターでの測定(図②)では、セシウム-137は8360名中、検出者は36名(0.43%)でした。1名を除きそのほとんどが10 Bq/kg 未満と非常に低い結果でした。これらのうち、小児の検出者は1名で、同居者では検出されず、また、本人の 1ヶ月後の再検査では検出されませんでした。
この結果より、事故後、2年9か月経過した現在、浜通りにおいて特別な食生活をしない限り「慢性内部被ばく量」は非常 に少ないと考えられます。

ときわ会における内部被ばく検査の現状

内部被ばく検出者と、その理由

 しかし、ここ最近(平成25年10月以降)になって検出者が増えました。10月以前は検出者29名のところ10月以降は6名、特に10月~11月にかけて増えました。お話を伺ったところ、いずれの方も山菜を採取し食している方でした。中には採取してきたものを測定し検出されたが「放射性物質が在るのは分かっていたが食べたいから食べた」という方もいました。それ以外の方は、「ある程度時間も経ち、雨風等である程度流れただろうから、もう食べて大丈夫なのでは」という方がほとんどでした。また、「自分はもう年だし山菜も気にしないで食べている。ただ、娘や孫が心配なのでみんなで検査を受けにきた。自分は出るだろう」とおっしゃったこの方は、ご自身が言うように検出されました。
しかし、「自分の体内から放射されるγ線で身内の方やそれ以外の接する方に外部被ばくをさせてしまっていることは知らなかった。被ばくは自分だけかと思った」と言われておりました。γ線を放出する物質であればこそ容易測定できますが、α線・β線は物質の電離作用がγ線より強いが容易に遮蔽できるため、体内に入ると検出することが出来ません。α線はγ線よりエネルギーが小さいと思っている方がいました。核種によりそれぞれ放出される線種は違いますが、透過力は線の性質であって、放射エネルギーがα線でも強いものもあれば弱いものも有ります。α線は、線の強弱に関係なく紙1枚で遮蔽出来ます。それに放出された放射性物質はγ線だけを出す物質だけではありません。山菜等を採取し気にしないで摂取されている方は、それだけ原発から放出された他の放射性物質をも摂取している可能性もあります。137-セシウムは約3カ月の実効半減期で体内から減少しますが中には90-ストロンチウムの様に実効半減期が18年という長い半減期で体内に蓄積されやすい核種もあります。また90-ストロンチウムはβ線を放出する核種なので体内に蓄積してもホールボディカウンターでは測ることが出来ません。そこで、ホールボディカウンターの検査でセシウムの値が検出限界値を超えてないからといって放射性物質の検査をしていない食べ物を食べ続ければセシウムは体内に蓄積されなくてもストロンチウムは蓄積してしまう可能性があるということです。

以上を踏まえますと、今年の4月以降に山菜を採取し放射性物質を摂取される方が増えると予想します。その後、検査を受けにきた方は見つかるでしょうが、受けに来ない方で被ばくされていることを知らない方が増えていくのではないでしょうか。五感で感じることの出来ない放射性物質は測定器で測って初めて存在が分かるものです。憶測で摂取してしまうと数値の高いものを摂取してしまう恐れがあります。事故直後半年から1年以内は被ばくの概念から言えば、大気中に放出してしまった放射性物質を吸入し肺から血流に乗り体内への急性摂取被ばく(現在初めに摂取したものは実効半減期的に体外へ代謝されています)。時間が経ってからは大気中の放射性物質濃度は下がります(地表や水中にフォールアウト)。すると、今度は大気中から摂取するよりも、日々の生活する食材から摂取する機会が多くなり、このような摂取被ばくの仕方を「慢性被ばく」と言います。つまり、事故から間もないころの被ばくと、時間が経ってからの摂取被ばくの仕方には違いがあるということです。大気中に飛散してしまった放射性物質を摂取しないでと言っても無理がありますが、時間が経てば摂取を管理することがある程度は可能です。基本的には検査された食材が(基準値以下)出回るので問題はありませんが、間違っても検査されていなくても大丈夫などと安易には自己判断してはいけないと検査を通して感じました。
街中の空間線量が下がるのは雨が降れば側溝に流れる機構になっていますのでそれに伴って他の物質と同様に放射性物質も流れて行き線量が下がります。雨樋や側溝の数値が高いそのためです。しかし、一歩外へ出た自然界はそうではありません。街中の様に流れやすい仕組みにはなっていません。原発事故から放出された放射性物質は身近に存在します。検査をしていて感じることは、受診される方も時間が経ち放射線に対する知識をある程度学んだのではないかと思いましたが、ただ心配とかむしろ関心は薄く知らない方が多くいました。放射線の線の性質(透過力、電離作用)を正しく知ることが必要ではないかと感じました。

内部被ばく検出者と、その理由

一年間に複数回の内部被ばく検査をおすすめします

今までの検査数の中で未検出基準値Cs134・220Bq、Cs137・250Bq以下の方は多数おられます。事故から1年以降で未検出の範囲内で検出された方は慢性摂取している可能性もあります。また、基本的に基準値以下の食材しか出回らない今、年に1度の検査では今の生活圏内での被ばくの有無を知ることは難しいです。現在は高い線量を保持している人を探しているわけではありません。人体は代謝していますので摂取後代謝する前なのか、ある程度代謝しきってから受けに来たのかは、年に1度の検査では分かりません。人体の生物的半減期を考慮し生活圏内の被ばくを知る目安としては、1度目の検査日から1か月後、もしくは1か月半後、2か月後、と3か月以内に再検査をすることで検出されなければ、今ご利用しているスーパーや家庭菜園で慢性的に摂取している可能性は極めて低いという有意義な結果として受け取ることが出来ます。期間内の摂取が無ければ今の生活スタイルで放射性物質を摂取する機会は少ないということになります。急性影響のない今、今後は晩発性影響があるか否かに気を付けなければなりません。
放射線業務従事者・医療業務従事者に義務付けられている放射線防護に関する講習と同様に、放射線と食育を踏まえた今後の講習会などの必要性を感じました。

内部被ばく検査の役割

・内部被ばく検査で「異常有り」 → 健康被害が起きる可能性が高くなります
・内部被ばく検査で「異常なし」 → 起きた健康被害は放射能の影響ではないということが出来ます

現在は、検出される方はほとんどおりませんが、ホールボディカウンター検査を定期的に受診し検出されなければ、今後お体が病変されたときにその原因が放射線によるものではないという見方も出来ます。
内部被ばくだけを発見するのがホールボディカウンター検出器の役割ではなく、今後の生活圏内での被ばく管理が目的ですので、現在被ばくしていないからと言って今後被ばくしない可能性がないわけではありませんので、皆様の健康をお守りするためにも定期的な検査にご協力していただければ幸いです。

最後に

以前、常磐病院を訪問してくださったベラルーシ共和国、ベラルド放射能安全研究所のアレクセイ・W・ネステレンコ氏によりますと、「セシウムは半減期が長いため、長期にわたって内部被ばくの監視が必要である。また、必ず自家栽培や自家採取による食品からの被ばくを受ける方が存在し、そのような方々を早期に発見し指導する必要がある」と述べられていました。
いわき市も例外ではないと考えられ、常磐病院でも今昔の結果で安心することなく、これからも長期に亘り、各専門の先生方の助言をいただきながら内部被ばくの測定を続けていきたいと考えております。ときわ会グループでは、今後も広くいわき市民に安心できる被ばくに関する医療を提供できるよう努力してまいります。

放射線部
鈴木 学