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夜尿症

夜尿症とは、概ね5〜6歳を過ぎても継続的におねしょが認められる状態をいいます。夜尿は、羞恥心を伴うことや寝具の処理に困るなどの理由で、両親や本人に精神的負担をかけます。特に兄弟がいて一人だけ夜尿症がある場合、この問題を大切に取り扱わなければお子さんの心理的発育の障害にもなりかねません。そのため、たかが夜尿症ですが、その治療には適切な対応が必要になります。

夜尿症の頻度

夜尿症の頻度は、5、6歳で約15%、小学校低学年で約10%、小学校高学年で約5%にみられます。12歳ぐらいになるとその多くは消失し約1〜3%の頻度といわれています。また成人になっても夜尿がみられる場合があります。

夜尿症の原因

夜尿症の原因として、小さな膀胱容量と夜間の尿量の多さがまず挙げられます。その他、深い睡眠のため尿意があっても目が覚めないことも原因となります。

小さな膀胱容量

ある研究では、夜尿症のあるお子さんとないお子さんでは、膀胱にためられる尿の量は大差なかったと報告しています。しかしある研究者は夜尿症のお子さんでは、睡眠中に実際にためられる尿量よりも少ない量で排尿反射が起こってしまう(機能的膀胱容量の減少)ことを報告しています。つまり何らかの原因で夜尿症のあるお子さんは、実際のためられる尿量がたまる前に、無意識に排尿してしまい夜尿となるようです。

多い夜間尿量

尿量の一部は、抗利尿ホルモンといわれる脳下垂体から分泌されるホルモンによって調整されています。この抗利尿ホルモンの分泌によって、尿量を減少させる作用があります。またこのホルモンの分泌には日内変動があり、日中は分泌が減少し、夜間は増加します。そのため夜間の尿量は減少し、熟睡することができるようになっているのです。しかしこのホルモンの分泌が、お子さんの場合、体の発達が未熟なためうまく調整されない場合があり、夜間の尿量が多くなり夜尿の原因になることがあります。

深い睡眠

お子さんによっては、睡眠が深いために夜尿となる場合があります。睡眠が深く膀胱が充満しても尿意を自覚できずおねしょしてしまうのです。しかし睡眠時の脳波を調べても夜尿症のあるお子さんとないお子さんには違いがなかったと報告があります。その一方、夜尿症のあるお子さんとないお子さんのご兄弟を持つお母さんは、夜尿のあるお子さんの方が明らかに眠りが深いとの印象を持つ場合が多いようです。また夜尿症のあるお子さんは、寝言やねぼけて歩き出すなどの行動が夜尿のないお子さんよりよく見られるようです。

遺伝的要因

ある研究では、両親に夜尿症があった場合そのお子さんは77%の割合で夜尿症が見られたと報告があります。片親のみ夜尿症があった場合は43%、両親ともに夜尿症がなかった場合は15%に夜尿症が見られたそうです。このように夜尿はなんらかの遺伝的要素を持っているようです。

心理的要因

過去には心理的要因で夜尿が起こると考えられた時期もありましたが、現在、心理的要因は否定されています。夜尿に対し適切に対応しなかったために、心理的に不安定になることはよく見受けられることです。

その他の原因

まれに尿路先天奇形、尿路感染症などの別の疾患があり、それに付随して夜尿症が出現している場合があります。その場合の多くは、日中も尿失禁を認めたり排尿時に痛みを伴ったりしますので、必ず泌尿器専門医を受診するようにしてください。

夜尿症の治療

夜尿症の治療には、大きく分けて生活指導と行動療法、薬物療法があります。

生活指導

カフェインの含んでいる飲み物をやめて、昼間は十分水分をとって規則正しくトイレに行く習慣をつけるように指導します。また便秘をしないように食物繊維の多い食事を心がけるようにしてください。夕食後の水分は減らして寝る前にトイレに行くようにします。

行動療法(おねしょアラーム)

おねしょアラームとは、寝る前にお子さんのパンツに小さなセンサーをつけ、おしっこでパンツがぬれるとアラームが鳴ってお子さんを起こす仕組みになっている機器です。夜尿をした直後にアラーム音で覚醒させるため、尿意により覚醒を促すトレーニングのように考えられますが、実際は睡眠中の尿保持力が増大し、朝までもつようになります。トレーニング開始直後は、アラーム音でお子さんはなかなか起きないので、ご両親が起こしてあげる必要があります。効果が出るまで約3カ月を要するため、お子さんとともにご両親の根気と忍耐が必要となる治療法です。しかしこの治療をやり遂げたお子さんの75%に効果があったと報告があり、再発率も低いことが知られています。

薬物療法

■ 抗利尿ホルモン剤(デスモプレシン)

夜尿の原因のひとつとして、夜間の抗利尿ホルモンの分泌不足があります。そのため鼻に噴霧するスプレータイプの抗利尿ホルモン剤を、寝る前に医師から指示されたとおりの回数を噴霧します。夜間尿量の多いタイプの夜尿症のお子さんでよく効きますが、多くの場合やめると夜尿が再発します。

■ 三環系抗うつ剤(塩酸イミプラミン)

三環系抗うつ薬は、うつ病の治療に使われる薬ですが以前より夜尿症の治療にも使われています。塩酸イミプラミンの夜尿に対する効果は。尿意覚醒を促進する作用、膀胱収縮抑制、尿量減少作用などが知られていますが、実際どの作用により有効性がもたらされているのかは、はっきりしていません。約50%のお子さんに効果があるといわれています。

このように夜尿症には様々な治療法があり、それぞれのお子さんの夜尿症のタイプや年齢を考慮して治療します。基本的には年齢とともに、夜間の膀胱のためられる尿量が増加し、抗利尿ホルモンの分泌により夜間尿量が減少するため、自然と夜尿症は治るものです。しかし夜尿症が見られなく年齢は個人差が大きいため、他のお子さんやご兄弟と比較しても全く意味がないばかりか、お子さんの心理的悪影響を及ぼしかねません。そのため夜尿症では「起こさず、怒らず、焦らず」の3つが大切といわれています。 しかしながら夜尿症は自然になおるものだからといって全く放置していてよいものではなく、お子さんのしつけという意味も含めて何らかの指導が必要でしょう。また昼間の尿失禁が見られる場合や排尿痛がある場合は、先天的異常など他の疾患を伴う場合がありますのでお近くの泌尿器専門医に是非ご相談してみてください。

<Vol.14:コラム担当> 医師 新村浩明